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【秋元康が語るAKB48への思い】(上)「劇場で出会えるアイドルが勝因」
人気アイドルグループ、AKB48(エーケービーフォーティエイト)が東京・
秋葉原の小さな劇場で産声を上げてから丸4年が経過した。NHK紅白歌合戦で彼
女たちの人気を全国区に押し上げ、世界にその実力を認めさせてきたのは、プロデ
ューサーで作詞家、秋元康さん(53)だ。AKB48はなぜトップアイドルの座
を射止めることができたのか。今後、どこに向かうのかを秋元さんに聞いた。
(村上智博)
--AKB48の名前の由来は
基本的には意味はありません。AKBは東京がTYOと書かれるように、秋葉原
(アキバ)の頭文字を取った。48は芝(シバ=48)さんというスタッフがいた
からとか諸説あるが、ぼくの中のイメージでは商品番号。それはお菓子でも車でも、
できるだけ無機質でなければなりません。そうすることで、AKB48がメンバー
の夢を乗せたある種の学校、システムというのを意味しようとしたんです。「この
人がAKBです」というのであればそれで終わりですが、AKB48は未来永劫(
えいごう)続いていく。そうなると、できるだけ無機質で数字とアルファベットの
組み合わせがいいということで、名前はできました。
--メンバーの衣装はどうやって作っているのか
ぼくは楽曲のイメージだけをスタッフらに伝えます。それを、自分が副学長を務
めている京都造形芸術大学の学生らがデザインを考えて作っています。
--AKB48の人気の秘訣(ひけつ)は
劇場から始まり、実際に行けば会えるようにしたことで、他のアイドルたちと差
別化できた。ぼくはずっとラジオやテレビでやってきて分かりますが、アイドルは
人気に火が付くと早いが、燃え尽きるのも早い。
ロックアーティストも、初めはライブハウスでわずかなファンを集めてやっていた
のが、何度も繰り返して体力をつけ、大きいホールコンサートでやれるようになる。
芝居も同じ。ぼくはリアルタイムで野田秀樹さんの劇団の「夢の遊眠社」などを見
てきましたが、一度刺さったファンは離れない。
野球部でもバレー部でも、とにかく走り、まず足腰を作るように、これまではフ
ァンに刺さるコンテンツになるよう、足腰を鍛えた4年間でした。AKB48がネ
ットアイドルであることも勝因でしょう。
--今のように勢いがつくのに4年間かかったのは当初の予想通りか
ぼくはもうちょっと時間をかけようと思っていました。本当は秋葉原に小さくて
面白い劇場があり、3年ほどはメディアの知るところなく、知る人ぞ知る存在であ
ろうと思っていた。だが、NTTドコモさんとタイアップで仕事が決まったことな
どもあり、ぼくの名前が総合プロデューサーということで出てしまった。秋葉原で
劇場はいつも満員で、やがて武道館も満員になり、そこで「だれだ、それは?」っ
て言われる感じが一番いいと考えていたんですが。
--アイドルグループのおニャン子クラブをプロデュースし、育てたときとのス
タイルの違いは
おニャン子クラブは素人だから面白かった。素人がプロになりかけて、終わった。
メンバーが自分たちの人気に気付かず、あのまま素人だったら、人気は持続できた
はずです。
AKB48は素人に毛が生えたところから始まり、ダンスレッスンをコツコツと
やり、番組やコンサートに出たりすることで、背丈もつく。そんな成長するさまを
見られるのが、できるだけ成長を止めた素人のままでいいというおニャン子クラブ
と違います。
AKB48自身は高校野球の球児みたいなもの。まず「地区大会でがんばれ」と
言い、やがて「君たちがいつか甲子園や東京ドームに立ったとき、そこにプロのス
カウトマンたちが来ていて、いろんな所にスカウトしてもらえるようになるんだよ」
といわれるような戦い方を進めてきました。
--AKB48のコンセプトはいつごろ編み出したのか
10年前にはありました。今、コンテンツ業界では映画や音楽が売れない。でも
演劇に落語といったライブだけは伸びています。
ぼくらのころはアルバムのジャケットとかがほしくて買って飾ったりしていまし
たが、今の子たちは配信された曲をダウンロードし、メモリーチップにして持って
いるだけ…。でも、コンサート会場に実際に行ったり、演劇を見に行ったりという
「生」だけは他人には頼めない。だから、ライブは強い。
ぼくは現況を見通してAKB48を始めたのではありません。予言者でもない。
ぼくは、カルピスの原液になるような強いコンテンツを作りたかったんです。
--10年ほど前といえば、つんく♂さんが手がけたモーニング娘。などがもて
はやされた時代でした
あまり他人のものは関係ないし、見ないんです。それまでの過去のデータにも興
味がない。それよりも、自分が面白いか、面白くないかで判断します。「こうやれ
ば、あそこに勝つ」とかいうのはまったくない。
ただ、つんく♂はミュージシャンで、音楽的には当時の最先端を行っており、優
れていてすごいと思っていました。彼は、アイドルはそんなに新しい音楽でなくて
もいい、という考えを覆した。だから、あそこまで音楽が売れた。
でも、それに対してぼくが、というのはまるでないですね。
--鉱山から将来、輝けるダイヤの原石となるようなアイドルを見つけるのに極
意はあるのか
ないです。ぼくはそれが苦手ですが、探し当てるのが得意な人はいます。例えば、
(お笑いコンビの)とんねるずの石橋(貴明)君なんかは、この子がいいとかすぐ
に分かるんですけど…。
ぼくは素材を見極めることはできなくても、それを磨いてくれといわれたら、そ
の人の一番持っている個性を引き出すように磨く自信はある。玉石混交の中からダ
イヤの原石を探り当てられるのはなかなかありません。
AKB48が面白いのは、たしかにオーディションはぼくが中心となって選びま
すが、あとはお客さんが磨いてあげるというところにあります。ぼくからすれば、
ノーマークだった子の人気が出たり、ぼくがいいなと思った子が意外に伸びなかっ
たりとかある。やはりお客さまが目となり、磨く人になっているんだなと思います。
大人数アイドルになったのは、選べるから。ひと握りのアイドルだったら、ぼく
らが間違った判断をするとそれでファンにそっぽを向かれたかもしれません。
--時代は変わっても、人々はアイドルを求めるのはなぜなのか
時代がアイドルを求めているのではありません。今も昔も、何も変わらないんで
す。
ぼくらのころは、彼女へ送るラブレターといえば手紙でしたが、今の子だと、そ
れがメールになっただけ。思いを届けるということは何も変わらない。
思春期にもなれば、男の子はテレビや雑誌のカワイイ女の子に一方的な疑似恋愛
をします。その対象が時代によって、たまたま変わるだけです。ぼくは50歳を過
ぎて「よく10代の女の子たちのことを書きますね」といわれますが、あまり考え
たことはない。何も変わらないんです。
--AKB48を10代中心にするとのコンセプトは、当初からあったことか
そうですね。アイドルといえば、ぼくのイメージだと16、17歳。ただ、アイ
ドル好きには13歳ぐらいが対象のファンもいる。松井珠理奈(じゅりな)という
子がメンバーにいますが、その子は12歳。でも、とても12歳には見えない。年
齢って何だろうなと思うこともあります。
--1チーム16人の3チーム制については
思いつきなんです。当初は20人いたメンバーを1、2軍制にしようと考え、人
気投票をやり、選抜メンバーを決めるとの方式を採ろうとしました。
でも、あまりに皆、一生懸命にレッスンをやっていたし、当初のメンバーだけで
毎日公演をやろうとするのもさすがに無理と分かり、もう1チーム作ろうと募集を
した。そのうち、3チームがそろった。だが、今度は年齢層が低くなってしまう。
そこで、土曜日の夜にちょっとお姉さんのショーを見せるSDN(サタデーナイト)
48を作ったんです。
--メンバーは姉妹グループを入れると100人を超える。今後、さらに増える
のか
増えるでしょう。今は100人いても、ドラマ撮影や、AKB歌劇団でミュージ
カルをやったりと、とても追いつかない。ただ、秋葉原の劇場は絶対にオープンさ
せて守らないといけない。そうなれば、チームの数が足りないんです。将来、何人
まで増えるかは分かりません。
--デビュー当初は、今のように数が増えると思っていたのか
思わなかったですね。せいぜい16人の3チームで48人と思っていた。現状で
は研究生もおり、3チームで回しても、体調や学校の行事で行けなくなったりする
メンバーも出てくる。そうなると、アンダーが代わりに入らないといけません。
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【秋元康が語るAKB48への思い】(下)「なんだ、これは!!で勝てる」
東京・秋葉原の劇場発のアイドルグループ、AKB48は昨年、米ニューヨーク
や仏パリなど海外公演を成功させた。プロデューサーの秋元康さんのインタビュー
は、これから国内外でさらにどう売り込んでいくかにも及んだ。(村上智博)
--AKB48は将来、世界にどう打って出る
いきなり世界というのは無理でしょう。確かにイタリアなど、海外からもAKB
48のようなものをやりたいという話はくるけれど…。「クイズ$ミリオネア」の
ように、確実にまずこんな問題があって、こんな仕掛けがあって、というのとは違
い、AKB48はどこまでの範囲が海外でも受け入れられるフォーマットなのかは
はっきりしない。
それにAKB48はすごくお金もかかっています。毎日、あれだけ多くのスタッ
フが動いているわけですから。先行投資しているんです。それをできるスポンサー
が現れ、たとえば米ニューヨークにぼくが劇場を作って、毎日16人のメンバーを
集めて公演をやらせてくれるとなれば、当てる自信はあります。
でも、ニューヨークやパリとなっても、初めのうちはすべてが先行投資。それを
きちんと理解でき、ビジネスとしてやっていけるスポンサーは実際にはなかなかい
ません。
--この日本だからこそ、AKB48は受け入れられているのか
いや、海外でもウケると思います。これまでいろんなアーティストが米国に進出
しましたが、米国に勝とうと思うから勝てなかった。ブリトニー・スピアーズのよ
うになりたいと思えば思うほど、勝てなかった。ブリトニー・スピアーズは米国に
既にいるわけですから。
だけど、AKB48は違う。観客は一流のアーティストといえば歌やダンスがう
まいと思うわけですが、AKB48はそうではない。でもニューヨークのウェブス
ター・ホールで昨年、公演したときに、観客の皆が「なんだ、これは」と驚いた。
その「なんだ、これは」が実は大事なんです。
これまでだと、納豆を米国で売ろうとすれば納豆にチーズを入れるとか、アメリ
カナイズしていた。でもAKB48はそんな納豆のまま。ぼくはメンバーの女の子
の勢いがすごくて、チャーミングで見たことがないというだけで観客には十分だっ
たと思うし、それが売り出すのにも一番いい。それをやり続ければ当たります。
--海外の反響は
海外ではインターネット上でAKB48を知る確率が高く、その公演を配信した
いといった声はたくさんあります。反響はある。かつてまだブレークしていないと
きに北京に行ったときに、東京に一度も来たことがない学生が、ネットを通じて知
っていたのを聞いたときには驚きました。やはりAKB48はネットアイドルなん
ですよね。
--いざ、海外に出るとなれば何が勝機になる
AKB48とは何なのかというフォーマットが分からないところが勝機だと思っ
ています。何だか分からないというのが、最大のコンテンツになる。
これまでだと、たとえばブルーマン。何だそれは!!となったから面白いんです。
AKB48も「何だ、これは!!」ってなるから、これは勝てるっ、と思うんです。
ただ、それには時間が必要です。
--AKB48が世界でも勝つために何ができる
放っていて、ネットで広がるのを待つんです。コンテンツというのは童話の北風
と太陽と同じで、ぼくたちがいくら売り込もうとも、海外の相手がほしいと言わな
ければならない。ぼくらは十分に種をまいているから、そのうち向こうから「こう
いう形でやらせてくれ」というのを待つしかありません。
--今は飛ぶ鳥を落とす勢いのあるAKB48だが、今後、それ以上のアイドル
が生まれる可能性は
それはあるでしょう。まさか、そんなことをやるとは!!という思いがけないと
ころがあって生まれることはある。ただ、AKB48のまねをしているようでは絶
対に無理だと思います。
--今後の露出方法は
宝塚歌劇団のように、淡々と幅を広げていきたい。今は歌手や女優、タレントに
なりたい子たちがAKB48には集まっていますが、ぼくはその中から、作詞家や
作曲家、漫画家、小説家が生まれたらいいと願っています。夢を持った子がこれか
らもAKB48に入ってきて、自分の夢をかなえてほしいと思っている。
野球部などではとにかく走り、足腰を鍛えますが、AKBではそれが歌であった
り、踊ること。だから、小説を書きたいメンバーであっても、まずは歌って踊る。
そうすることで、根性やマナー、礼儀や先輩後輩の関係を学ぶんです。
ぼくは教育に興味があります。今の日本の若い子たちは夢がないからダメといわ
れますが、AKB48に入ってきた子たちには夢がある。だからこそ、どんどん礼
儀正しくなるし、人の気持ちも分かるようになってきている。メンバーの親御さん
からも、「うちの子がこんなにまじめにレッスンに通うとは思わなかった」といわ
れます。
本当ならば、文化庁や文科省などの支援もあればと思うんです。それによって、
そんな若い子たちの夢がかなえられる場所になればなと思います。
--今の若い子が夢を持てるようになるには
AKB48の彼女たちのように、まずは一歩を踏み出すこと。やりたいことが何
なのかは分からなくてもいいんです。受験勉強を真剣にやるのもいいし、修行に出
るのもいい。とにかく何かをやれば、「これじゃないなあ」といったことが初めて
そこで分かる。
これだけ選択肢の多い今の世の中で一つを選ぶのは大変だけど、片っ端からやっ
てみればいい。途中でやめてもおかしくはないと思います。昔みたいに何か始めた
らやり通せ、というのはない。人生はあっという間ですから…。自分は違うなと思
ったらやり直して、また次の場所で全力で走ればいいんです。
AKB48のメンバーが偉いのは、秋葉原でアイドルを募集したとき、秋元康と
いう名前と振付師の夏まゆみという手がかりだけで、とりあえず応募してみようと
一歩を踏み出したこと。その「やってみよう」という意志が、今の子たちには残念
ながら欠けていると思います。
--AKB48にはSDN(サタデーナイト)などの姉妹グループがあるが、今
後、若い子を育てる場所はどこまで増えるのか
今、その準備をしています。大阪と福岡でやろうとしていますが、大変。何かを
始めるにも、打ち上げ花火をドンと打ち上げるだけで終わるわけにはいかない。ま
ず、アイドルを募集し、オーディションを重ね、どうマネジメントするか。AKB
48のお古を使い回すわけにもいきません。
今は東京でSDNも入れると4チーム、名古屋・栄地区でのSKEも入れると5
チームで回っていますが、ぼくの理想は全国の7大都市にAKB48のようなグル
ープがあること。そんな夢のある場所の熱気に若い子たちに触れてもらえたらって
思います。
夢があれば、何かができます。突然、「今からそちらのオーディションに行きた
いんです」といった電話をかけてみたりと、夢の一歩を踏み出そうとする若い子た
ちがすぐにまたげるような、一番低い敷居を作ってあげられたらと思っています。
--そんな夢の場所を全国に作る可能性はどれほどあるのか
今年は大阪か福岡かどこかで1つか2つオープンしたい。まずは“実”を上げた
いと思っています。3~5年後には全国7大都市すべてに、という構想があります。
将来的には各地の劇場のエースを1人ずつ選抜し、JAPAN48というのをや
りたいのですが、でも、それは今はまだ絵に描いたもち。結果的にそうなればいい
と思っています。JAPAN48ができるころには、ソウル48やパリ48、ニュ
ーヨーク48があって、世界の48ができているかもしれません。
でもそれ以前に、今はAKB48の人気が今以上に高まり、メンバー一人ひとり
の夢がかなえばいいと考えています。今は、いつも1日で250人は入れる劇場に、
毎日何人の応募があるのだろうかが気になります。その応募数が落ちない限りは、
AKB48は存続すると思っています。
--今年はどんな年にしたい
できるだけメンバー全員にチャンスをあげたいです。マラソンと同じで、メディ
アで取り上げるのは先頭集団になりがちですが、その先頭集団が売れないと、AK
B48は世の中に広がらない。
今は100人の大所帯ですが、AKB48がメジャーになるほど、先頭集団だけ
では仕事をこなせません。最終ランナーまでなんとかしてあげたい。野球では九回
裏二死で、監督の思いもあり、3年生がバッターボックスに立つことがありますが、
それに近い感じです。
--その一つのきっかけが、8日にテレビ東京で始まったドラマ「マジすか学園」
だと思うが
あの番組は、アイドルならヤンキーはやらないだろうというところから発想し、
やってみることになりました。ぼくの中では、アイドルは何でもありです。メンバ
ーも総出演します。
AKB48はメンバーの成長のプロセスが見られるシミュレーションゲームのよ
うなところがあり、ファンの皆さんがプロデューサー。その一人一人が面白がって
くれるサプライズを、いかに提供できるかを考えています。
チームのシャッフルをやったり、「マジすか学園」でヤンキーものをやってみた
り。その時々で手を変え品を変えてやってきました。前田敦子がNHK大河ドラマ
に出演したり、篠田麻里子がコマーシャルに出たり。すそ野もどんどん、広がって
いってくれたらと思います。
--つんく♂さんの手がけるアイドルグループなどとタイアップすることは
ぼくはやりたいと思っていますが、それぞれの城があり、方針がある。なかなか
難しいでしょうねえ。
--メンバーのソロ化については
何も考えていません。ぼくはそのときにベストだと判断し、面白いと思ったこと
を今後もやり続けていくだけです。
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