映画評 一覧
「硫黄島からの手紙」 (米)
個をのみこむ不条理
指揮官の栗林中将(渡辺謙)は、硫黄島の特性を生かした防衛戦術を編み出し、米軍に
対抗する 昭和戦争末期の硫黄島の戦いを題材に、クリント・イーストウッド監督が手
がけた2部作の第2作。同島に日本の男たちが残した膨大な数の手紙。それが発掘され
るところから、物語は始まる。
彼らは何を思って戦い、何を手紙に託したのか。時はさかのぼる。
戦況が悪化する中、兵士の西郷(二宮和也)は、理不尽な軍の有り様に絶望しかけて
いた。しかし、新たな指揮官として着任した栗林忠道・陸軍中将(渡辺謙)が淡い希望
をもたらす。栗林の方針は型破りだが、合理的。名誉の死より1日でも長く生き延びて
戦え、という立場だった。栗林への共感と反発が混在する中、米軍上陸の日が訪れる。
米側の視点からの第1作「父親たちの星条旗」では正体知れぬ敵だった日本兵たちは
、視点を反転させたこの第2作で人間の顔を獲得する。そして浮かび上がるのは、個を
のみこんでいく戦争の不条理。敵味方を超えて、それを描いた点だけとっても、この2
部作の意義は大きい。渡辺はもちろん二宮ら若手俳優も豊かな役作りで貢献している。
細かい描写には異議を唱える向きもあるだろう。だが、今、日本人の戦争体験を広く
発信できる力を持っていたのは、米国人のイーストウッドだった。そこについても私た
ちは、考えをめぐらすべきだろう。2時間21分。丸の内ピカデリーなど。(恩田泰子
)
(2006年12月8日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/review/20061208et0a.htm
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