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「テールズオブジョーカー#8」 (トイズプレス/1996年9月刊)より  永野護インタビュー/インタビューと文、大塚ギチ。 「ファイブスター物語」連載、第4話終了間際のインタビュー。 モーフィングロボット現る?。「プラスチックスタイル」 (本文ではコードネーム「モード」と言っている) の初期コンセプトなどが語られる。 --------------------------------------------------- アトリエに向かう途中の步道橋から邊りを眺めていた。 幾つもの巨大なビルの影で覆われた交差點を車が行き交う。 この街はいつも風が吹き、そしてこの街はいつも晴れている氣がする。 その印象は初めてこの街に足を踏み入れた時から變わっていない。 それから度ュ訪れているが實際は晴れの日ばかりでもなく、 雨の降る日だったり雪の降る日だったりもした。 たぶん初めて訪れた日の風景を頭の中に印象づけてしまったせいなのだろう。 とにかく自分にとって飯田橋はいつも晴れ渡った街なのだ。 この街は印刷所が近いせいもあってか、出版社が多く、 いまこうして立っている步道橋の上でも忙しそうに先を急ぐ同業者と 思われる人たちと出會うことが出來る。そういう人に出會う度、 何故か妙な嫉妒と、同じ職種であることを分かち合いたい衝動に驅られる。 もちろん、したことはないのだが。 この街で足を止めているは奇妙なことのようで、 手すりにもたれ煙草をくゆらしているだけの僕を誰もが見て見ぬフリをし、 去ってゆく。そんな 外感もいまは少し氣持ちいい。 氣持ちいい氣分のままに、これから逢いに行く作家のことを少し、 考えてみた。 永野護。 その名前から連想するイメージはデビュー以來まったく變わっていない。 繪柄から受ける獨自の美意識、纖細な線、過激ともとれる發言の數數は、 そのまま名前にオーバーラップし、いまもなお僕の頭の片隅で變わらずに 存在している。 20代で「ライフワークだ」と言い切ってしまった『ファイブスター物語』。 この5つの星の物語も連載開始から早10年が經った。 その區切りの付け方を永野は嫌うが、やはりキャッチコピーとして使い たくなってしまう。そして10年目の今年。過去最高のロングストーリーに なった第4話~放浪のアトロポス編~が終わる。 ラストを目前に控えたこの8月、いま彼はどんな心境で原稿に挑んでいるの だろうか。そしてこれから始まる第5話。それはいつ、 どんな形で讀者の前に姿を現すのだろうか。 多くのクエスチョンが頭をよぎる。 步道橋の上で3本目の煙草に火をつけようとして、止めた。 そろそろアトリエに向かうとしよう。僕は、力無くフラフラとする 足に前日の睡眠時間の無さを後悔しながら、アトリエのドアを叩いた。 ドアの向こう側の彼は、眠たそうな目を擦り「暑くて1時間しか寑れなかった」 と言いながら、コーヒーを入れた。 永野護。その名前から連想するイメージはデビュー以來まったく變わって いない。それはまるで僕にとっての飯田橋という街のように。 それが逆に僕を緊張させる。それを悟られないように僕は、笑った。 少し無馱話をし、互いの空氣を微調整する。彼の1杯目のコーヒーカップが 空になるのを見計らって、僕はテレコのスイッチをオンにした。