第五話 限界離脱領域
王女「タリビアのユニオン復帰に、アメリカ大統領の緊急訪問、
物資の援助とエネルギー供給増量の確約。
やはり一連の事件は、アメリカとタリビアによる画策。
そして、この事件にソレスタルビーイングは利用された」
眼鏡娘「いいえ、違います。
ソレスタルビーイングは戦争根絶という意思を貫き、
タリビアを攻撃したまでのこと。例え世論から背を向けようとも。
ふふ、彼らを利用しようとする考えは改めた方がいいわね」
王女「シーリン」
眼鏡娘「マリナ様、そろそろ諸国漫遊のお時間です。吉報をお待ちしていますわ」
王女「できうる限りの努力をします。
アザディスタンを救うには、太陽光エネルギーが必要なのだから」
眼鏡娘「1つだけ聞いていいかしら。なぜこの役目を引き受けたの?」
王女「決まっています。わたくしにしか、できないからよ」
─人革連軌道エレベーター リニアトレイン発着ロビー─
廣播「本日は、天柱交通公社……」
沙慈「姉さん、わざわざ見送りにこなくても」
絹江「こっちの支社に用があったついで。
いいこと沙慈、しっかり勉強してくるのよ!
いくら奨学金で行ける研修旅行でも、旅費は私が出してるんだから」
沙慈「ごめんね、負担かけて、ルイスがどうしても個室がいいって言うから」
絹江「ふう。お金持ちのお嬢様って」
露易絲「私がどうかしましたか?」
絹江「ルイス!」
露易絲「安心してくださいお姉様、沙慈君のことは私がし~っかり面倒見ますから」
絹江「そ、そうね。ルイスがいてくれたら安心かな。
沙慈、旅行気分になって羽目をはずし過ぎないようにね。
ルイスに変なことしちゃだめよ」
沙慈「な、何言うんだよ姉さん!」
露易絲「大丈夫ですよお姉様、沙慈君にそんな甲斐性ありませんから」
絹江「そ、そう? ぶっちゃけ、この子はあんたに合わないと思うんだけど」
露易絲「聞こえてますよ、お姉様」
大叔「手続きは済ませた。行くぞ、少尉」
銀髮「了解です。中佐」
剎那「モビルスーツの、性能実験」
阿雷「スメラギさんからミッションプランが届いたよ。
モビルスーツ性能実験の監視、状況によっては破壊もあり得るって」
錄音「気をつけろよ、アレルヤ。タリビアの一件以来、
俺たちは世界の嫌われ者だからな」
阿雷「ご忠告、感謝しますよ」
廣播「本日は、天柱交通公社E603便にご乗車いただき、誠にありがとうございます。
本リニアトレインは、低軌道ステーション真柱直行便です。
到着時刻は18時32分、グリニッジ標準時、翌日3時32分になります。
初期加速が終了しました。今から当トレインは、緩やかな減速状態を開始し、
車内が擬似的な無重力状態になります。シートベルトをお外しの際は、
十分ご注意ください」
螢幕「太陽光発電装置建設計画、それは、地球の化石燃料が枯渇し、
人類が新たなエネルギー資源を確保するため半世紀前に発足しました。
発電装置は全長約五万キロメーターに及ぶ軌道エレベーターと……」
大叔「そういえば、少尉が超人機関に志願した理由を聞いていなかったな」
銀髮「志願はしていません。
私は、超兵計画のために生み出されたデザインベイビーです」
男「超兵1号は、体内に埋め込んだナノマシンで、身体機能を保全、
宇宙環境下での長時間活動を可能にしています。
また、各神経系統の感覚増幅処置により……」
大叔「説明はいい」
男「なにか、お気に召さないことでも?」
大叔「貴官は自分たちがやっている行為を何とも思わないのかね?」
男「思いません。劣悪な宇宙環境に適応するため、少尉の存在は必要不可欠です」
銀髮「なにか?中佐?」
大叔「いいや」
螢幕「太陽光エネルギーを蓄電させた衛星が、マイクロウェーブ送信によって、
軌道エレベーターへ電力を供給。エレベーターを通して、
地上の各地域へ配電されます。1日の電力供給量は、1.2サジュール(不確定)。
現在、人類革新連盟に参加する35の国に、
エネルギーチューブによる直接配電が行われており、また……」
沙慈「ルイス、見てるのに」
露易絲「いいから、遊びに行く、行く」
─人革連低軌道ステーション真柱─
露易絲「ようやく着いた」
沙慈「は~」
露易絲「どったの?」
沙慈「疲れたの。君が時間いっぱい連れ回すから」
露易絲「だらしないな」
沙慈ルイスがタフなんだよ」
ボルス「沙慈・クロスロード君と、ルイス・ハレヴィ君だね?」
沙慈「あ、はい!」
露易絲「そうです」
ボルス「君たちの研修を監督する、ボルス・アッサンだ。
低軌道ステーション真柱へようこそ」
ボルス「沙慈君、低軌道リングがなぜ必要か分かるかい?」
沙慈「はい。リング内に磁性流体を流して遠心力を作り、
ステーション全体を軌道高度にとどめている、でしたよね?」
ボルス「ちゃんと勉強はしているみたいだな」
露易絲「ねぇー沙慈、見て見て」
沙慈「だめだってルイス、勝手にそんなとこ行っちゃ……」
露易絲「キレイね……」
沙慈「本当に……」
露易絲「映像で見たのと、全然違う」
沙慈「うん」
ボルス「2人とも気をつけて、高度1万kmとはいえ、微重力はあるんだ。
足を踏み外したら、地球へまっさかさまだぞ」
沙慈「あ、はい!」
露易絲「すいませんーー あ~~」
露易絲「沙慈の馬鹿!ちゃんと助けてよ~~」
ボルス「やれやれ……」
軍「こちらです、中佐」
大叔「この機体か」
軍「はい、超兵1号の反応速度でも対応させた機体、MSJ-062SP、
ティエレン・タオ・ツーです」
銀髮「ティエレン・タオ・ツー、私のモビルスーツ……」
大叔「対ガンダムの切り札か」
─2日後─
服務生「お食事はお済になられましたか?」
阿雷「ええ」
服務生「食後のお飲み物、何かお持ちしましょうか?」
阿雷「コーヒーを」
服務生「かしこまりました。ご旅行ですか?」
阿雷「好きなんですよ、上から地球を見るのが」
服務生「その気持ち分かります。地上はゴタゴタしていますから。
ソレスタルビーイングなんて組織まで出てくるし」
阿雷「本当、嫌だよね」
服務生「まもなく到着いたしますので、それまでごゆっくり」
─人革連 低軌道ステーション 重力ブロック─
露易絲「やっぱり、重力があるって最高」
沙慈「そうだね。 ん?」
紅龍「お嬢様、そろそろお時間です」
王留美「ええ、分かっていてよ」
沙慈「痛!」
露易絲「余所見すんな!」
沙慈「すみません……」
大叔「少尉、機体の運動性能をみる。指定されたコースを最大加速で回ってみろ」
銀髮「了解しました、中佐。 行きます。 最大加速に到達」
大叔「最大加速時で、ルート誤差が0.25しかないとは……
これが超兵の力。 しかし、彼女はまだ乙女だ……」
銀髮「なにこの感じ」
阿雷「なんだ?あ、頭が」
銀髮「痛い……」
大叔「少尉、指定コースから離れているぞ、どうした?」
銀髮「ちゅ、中佐、何かが、私の頭を、刺激して……」
阿雷「な、なんなんだこの頭痛は?うっ、あああーー」
哈雷「くそ!どこのどいつだ!勝手に俺の中に入ってくるのは!」
銀髮「あなたはだれ?」
哈雷「てめぇー殺すぞっ!」
銀髮「いやぁーー」
大叔「やめろ少尉!」
銀髮「いやーーやめて!いやぁーー!」
大叔「やめろー少尉ーー!」
--
┌────────────────┐
│ 吉野龍田花紅葉 更品越路月雪 │ [amemura]
└────────────────┘ http://amemura.storists.net/
--
※ 發信站: 批踢踢實業坊(ptt.cc)
◆ From: 124.208.235.95