「HERO」はすてきな大人たちのドラマ 脚本家・福田靖さんインタビュー
01年には連続ドラマ、07年には劇場版と、大ヒットした木村拓哉主演の「HERO」が帰
ってくる(フジテレビ系、7月14日スタート、毎週月曜 後9.00~)。型破りな検事・
久利生公平を中心に描かれる個性的な面々の群像劇である本作。脚本を手掛ける福田靖
さんに、新シリーズの見どころを聞いた。
──「HERO」は福田さんにとってどんな作品ですか?
僕は「HERO」で脚本家として仕事できるようになったので、苦しいことは忘れていて
、良かった思い出しかなかったですね。実際に書き始めると、そうそう、こういう苦し
さがあったという思い出がよみがえるんですが(笑)。
前作のときは僕自身がほとんど無名に近いときに起用されて、まったく期待されてな
い状態だったんです。書いていくうちに採用されてメーンになっていったんですけど、
今回は最初からだし、応えなきゃいけないというプレッシャーがある。そういう意味で
厳しいです。
前作は13年前ですから、ジーパンをはいた20代の検事は反骨心のある若者ということ
でよかったかもしれないけど、今回は果たしてそれが通用するのかと思いますし。それ
に今は、検事という職業がいい意味でも悪い意味でも知られるところになっています。
どっちかというとネガティブな印象が多いので、検事が主役で「HERO」です、という方
程式は崩壊していると思う。同じ作品だけど以前のままの「HERO」ではないんだなとい
う違和感を抱えながら書いています。
──13年の時間が経過して、久利生という人物は変化しているんでしょうか。前作のフ
ァンとしては変わっていてほしくないという気持ちもあると思いますが。
僕も変わってほしくないと思います。思うにドラマの中に主人公は、“成長する主人
公”と“成長しない主人公”の2種類があります。成長しない主人公というのはネガテ
ィブな意味ではなく、最初から完成されているという意味です。水戸黄門や古畑任三郎
がそうですね。一方で成長する主人公というのは、星飛雄馬とか旅館の若おかみ奮闘記
の主人公のようなものです。久利生さんは前者で、最初から久利生。ずっとぶれないで
いてほしいわけです。そういう意味では変わってないというふうにしたい。
ただ、時代が変わると変わらざるを得ない部分もある。久利生もスマホを持っている
わけですよ。久利生がスマホ?と思うけど、かたくなにガラケーを持たせるのも。そう
いう新しいものに対してどう対するのが久利生らしいのか考えます。ただ、とにかく軸
はぶれないとか、本当のことを知ろうととことんやるとか、根本的なところは変わりま
せん。あのころに比べれば、周りに流されないという久利生の個性はより際立つ気がし
ます。13年の間に“空気を読む”とかいろんな言葉が出ましたけど、周囲の意見や考え
に久利生は流されない。でも、こんな現代に自分を持つということは難しいものだなあ
と思います。
──そもそも「HERO」というタイトルはどうやって決まったのですか?
僕が聞いた話では、企画段階では木村さん主演のヒーローもの、ということがまず決
まっていたそうです。で、「仮ヒーローもの」という名前で進めていたんですが、タイ
トルをそろそろ決めなきゃいけないとなった時に「HERO」でいいじゃない、と決まった
と聞いています。
──福田さんはこのタイトルにどういう意味合いを感じていますか?
まあ、「HERO」っていうタイトルはこっ恥ずかしいじゃないですか。13年前も、ギリ
ギリの段階で「群像劇なんだから『ヒーローズ』」にした方がいいんじゃないか」とい
う意見も出たのですが、語呂が悪いから「HERO」で、と話し合ったのを覚えています。
最終回で「おまえの父ちゃんが『HERO』だよ」というセリフを書いていますけど、ヒー
ローは誰の心の中にもいるというところに意味を見いだして作っていました。
──その点は今回も変わりませんか?
そうなんですけど、あのころのように単純じゃないんです。例えば前作だと大塚寧々
さん演じる中村検事が「今日は機嫌が悪いの。起訴!」ってやってましたけど、今もう
そんなことできないわけですよ(笑)。「HERO」というドラマが有名になったばっかり
に、13年前に比べてアドバイスしてくれる方がたくさんいてありがたいんですが、勉強
すればするほど常識にとらわれてむちゃができなくなる。ここのせめぎ合いがあるんで
す。
──そんな難題も多い中で、今作で楽しみにしている点はありますか?
新しいキャストの方たちが「HERO」の世界になじんでお芝居されているのを見ると「
こういうことになるのか」という面白みを感じます。前作からいらっしゃる小日向(文
世)さん、八嶋(智人)さんと一緒になって「HERO」の世界を作っているのを見ている
と、なるほど!と。城西支部の真ん中の部屋にみんなが集まってガチャガチャやるシー
ンが一番楽しいし、一番「HERO」っぽい。それぞれの個性を際立たせて進んでいくのが
楽しくて、モチベーションになります。
──新しいキャラクターを作る上で難しい点は?
演じる俳優さんが決まるまでは、文字の上では前作に出演された阿部寛さん、勝村政
信さん、大塚さんが頭から離れなかったですね。新しいキャストの方が演じているのを
見て、初めてその呪縛がとけていきました。中でも北川景子さんが演じる久利生の相手
役のポジションは難しい。一視聴者として北川さんを見て、きりっとしている、クール
というイメージで作りました。あて書きというとちょっと怒られそうなキャラクターに
なっています(笑)。
──どんな注文にも「あるよ」と答える久利生の行きつけのバーのマスター(田中要次
)は、今回も「あるよ」と応え続けるのでしょうか?
今回も「あるよ」なんですけど、これもですね、お客さんはそれを望んでいると思う
んです。でも、脚本を書いているとまた同じことをやってるなと思うわけで、田中さん
も飽きるだろうと思うから、意味合いの違う「あるよ」にしてみたりと微妙に変えてい
ます。それがお客さんに「前作と違う」と言われたら、「すみませんね」って言うしか
ない。でもまったく同じものを作ったら「また同じ」って言われる(笑)。常にその葛
藤です。自分の中の物差しで判断するしかないですね。
──今回の「HERO」の一番の見どころは?
エンターテインメントであることが第一。もっともらしいことを話そうとしましたが
、根本は娯楽です。皆さんが面白いと思ってくださればいい。1時間あっという間に見
終わって、2時間の作品を見たというぐらいの充実感を味わっていただきたいです。す
てきな大人たちのドラマになっていると思いますので、笑えるシーン、感動的なシーン
、大人の俳優たちの実力をぜひ見てください。
ふくだ・やすし 脚本家。NHK大河ドラマ「龍馬伝」、ドラマ「HERO」「ガリレオ」「
CHANGE」(いずれもフジテレビ系)「DOCTORS~最強の名医~」(テレビ朝日系)、映
画『海猿』シリーズなどを手掛ける。
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/822141/3