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テレ朝50周年記念『警官の血』 鶴橋康夫監督 自らの戦後史と“添い寝”  テレビ朝日は、開局五十周年記念ドラマとして二月七、八日の二夜連続で 「警官の血」(午後9時)を放送する。計五時間、総勢百五十人のキャスト で、戦後から現代まで三代続く警察官一家の六十年を描く。監督は「砦(と りで)なき者」「天国と地獄」などで知られるベテラン鶴橋康夫さん(69 )。一昨年に紫綬褒章を受けたテレビ界のベテランが、自らの戦後と重ね合 わせながら大作を完成させた。  このドラマには三人の主人公が存在する。復員し警察官になった初代・安 城清二を江口洋介、七〇年安保の時代に警察のスパイとして大学に潜入する 二代目・民雄を吉岡秀隆、警視庁の刑事となる三代目・和也を伊藤英明が演 じる。さらに四人目の重要人物として、清二の同期でエリート公安刑事・早 瀬(椎名桔平)が安城家に影のように付きまとう。  三人の物語を貫く一本の太い幹が、東京・谷中天王寺の五重の塔が炎上し た夜に起きた清二の事故死。生前、清二は未解決の二件の美少年殺人事件を 調べていた。父の死と事件の関連を探っていた民雄は殉職、謎は孫の和也に 引き継がれる。  原作は佐々木譲氏の同名ミステリーだが、ドラマは謎解きよりも三人三様 の警官としての在り方と、時代の描写に重点を置いた人間ドラマになってい る。  力強い復興の時代を生きた正義漢の清二。“革命の時代”に翻弄(ほんろ う)された繊細な民雄。祖父、父の死すらも保身に利用する、したたかな現 代っ子の和也。脚本も手掛けた鶴橋監督は、三人を花に例え、こう話す。  「清二は真っ青で真っすぐな菖蒲(しょうぶ)。民雄は裏と表がある半夏 生(はんげしょう)。和也は真っ黄色の雑草のセイタカアワダチソウ。三人 の“気分”がすべて僕の中にあって、誰か一人に肩入れすることがなかった」     ◇  一九四〇年生まれの監督にとって、ドラマは自らの戦後史でもある。「何 もないが青空だけが美しく、人の表情が明るかった」清二の時代に少年期を 送り、七〇年安保の大学生は「ちょっと下の“弟世代”だから、どうしても 優しく撮ってしまう」。“時代と添い寝する”が彼のドラマ作りのテーマだ が「今回は“今”ではなく自分が生きてきた時代すべてに添い寝した」とい う。  大きな罪の前では小さな罪は問わなくていいのか、さらには、もっと大き な罪である戦争は裁けるのかといった監督いわく「ドストエフスキー的な」 命題もドラマには横たわっている。硬派で骨太なドラマだが、男娼(だんし ょう)の美少年の白い肌、血を連想させる真っ赤な夕日など鶴橋作品特有の 色っぽさも漂ってくる。  三カ月かけて全国縦断ロケを敢行。主要四人のほかには、清二の妻に木村 佳乃、民雄の妻に貫地谷しほり、和也の恋人に栗山千明。清二編には泉谷し げる、浅田美代子、民雄編には高橋克典、奥田瑛二、和也編には佐藤浩市、 寺島しのぶと、ドラマが何本も作れそうなほど主役級の俳優が脇役で出演。 物語の鍵となる谷中五重の塔の炎上は、塔を再現して実際に燃やした。ドラ マは、出てくれた俳優、撮りたいものを理解してくれたスタッフ全員への監 督からのラブレターだという。  「人が僕の映像を評して言ってくれるスピード感、ダイナミックスよりも 、今回はそれに勝る僕の優しさが出るといいなとずっと思っていた。まばた きする間のような一瞬一瞬に“永遠”を見せたくて顕微鏡をのぞくような撮 り方をした。今回ほど未来に託せるものを作りたい、たくさんの人に見てほ しいと思ったことはない」 2009.1.29 東京新聞 朝刊 http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2009012902000092.html