観たい:テレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル「警官の血」
◇一家の光と影に「戦後」
親・子・孫と一家3代の物語を書けば時代の叙事詩となる。日本の
戦後約60年は一体、どんな時代だったのか。3代続けて警察官とな
った男たちの光と影が、歴史の暗部を照らし、この国のゆがみを浮か
び上がらせる。佐々木譲の長編ミステリー「警官の血」がドラマ化さ
れ、7、8日の2夜連続約5時間にわたり、午後9時からテレビ朝日
系で放送される。【網谷隆司郎】
「私自身、この小説を書きながら、映像化は絶対無理と確信してい
た。60年にわたる男たちの地味な話なので。でも台本を読んでウオ
ッと驚いた。原作のダイジェストでなく、原作のいいところを抽出し
て、3代の家族のドラマになっていた。厚みが増し説得力が加わった
」と作家自身が語る。
■親子3代の正義
街の人たちを守る交番勤務を志し、正義を追求した安城家の親子3
代の警察官の物語。戦前世代、団塊の世代、団塊ジュニアという位置
づけで、多くの人が自分たちの家族の来し方と重ねて、60年の月日
を振り返る仕掛けだ。
ドラマでは、江口洋介、吉岡秀隆、伊藤英明が3代をリレーする。
敗戦後、復員してきた男たちが食うための仕事として警察官を選ぶ
。安城清二(江口)は愛される駐在さんとして東京・谷中で勤務して
いたが、近くの谷中天王寺の五重塔が炎上した際、謎の死を遂げた。
同期で警視庁公安刑事のエリートとなった早瀬勇三(椎名桔平)が、
その謎に深くかかわり、息子で2代目となる民雄(吉岡)、3代目の
和也(伊藤)が父の、祖父の死の真相を早瀬から探ろうと暗闘が続く
。
■昭和のにおい
原作を脚色しドラマの脚本も書いた鶴橋康夫監督が言う。「3代が
生きた昭和のにおいを忠実に出そうとした。ところが東京には戦後が
ない。ロングで撮れるところがない。勢い、九州、四国、北海道など
に戦後の面影のある建物や広場を探して足掛け3カ月、異例の全国各
地での撮影となりました」
昭和のにおいは人物描写にも。3%しか生還しなかったというレイ
テ島派遣隊の生き残りである早瀬に戦争による深い心の傷を感じさせ
る一方、貧しい戦後社会でたくましく生きる男女の姿を生々しく描く
。上野公園での男娼(だんしょう)、街娼といった戦後風俗が官能的
に描写され、夫婦間の暴力やヤクザ社会の実態など、最近のテレビで
はとかく敬遠されがちな猥雑(わいざつ)で危ない場面が迫力ある映
像で続く。鶴橋監督得意の情念世界、エロスと死がこれでもかという
くらい展開される。
2代目警官の民雄は過激派学生集団にスパイとして潜入するため北
大に入学させられ、赤軍派の革命運動を未然に阻止するが、友を裏切
るスパイ行為が精神を切り刻む。
3代目警官の和也は、暴力団担当のベテラン刑事(佐藤浩市)の癒
着を暴く内部スパイを命じられる。証拠をつかむためには手段を選ば
ぬ冷たい男になったが、鶴橋監督は原作にないクラブホステス(寺島
しのぶ)を登場させ、和也との今後の仲を予感させる余韻ある終幕に
した。
「このドラマは、小さな家族の大きな物語です。警官の血は日本人
の血でもあるし、私の血でもある。それにしても、日本人というのは
個人も国家も謝罪、謝るのが下手だなあ。戦地の極限状況で美少年に
裏切られて殺してしまう経験を持つ早瀬に誰が謝ったか。あの戦争は
侵略戦争でなかったという人物まで最近出てきたし」と鶴橋監督は、
日本人の血に複雑な思いを吐露する。
木村佳乃、貫地谷しほり、栗山千明、奥田瑛二、榎木孝明、高橋克
典、伊武雅刀、麻生祐未、浅田美代子ら150人もの俳優が出演する
大河ミステリー。登場人物の誰かに自分と似た影を見いだすことがで
きそうだ。
毎日新聞 2009年2月2日 東京夕刊
http://mainichi.jp/enta/geinou/news/20090202dde012070008000c.html
椎名桔平怪演!21歳から83歳まで男の生涯描く
俳優の椎名桔平(44)が、テレビ朝日開局50周年記念ドラマス
ペシャル「警官の血」(7、8日・後9時)で、物語のカギを握る謎
めいた男の生涯を、21歳から83歳まで演じた。2夜連続、5時間
を超す大作ドラマで、公開中の映画「ベンジャミン・バトン─数奇な
人生─」のブラッド・ピット(45)も顔負けの八面六臂(ろっぴ)
の怪演を披露する。
80歳から徐々に若返っていく男を演じたブラピとは対照的に、椎
名はドラマの柱となる男・早瀬勇三の生涯を21歳から83歳まで1
人で演じきった。
「ひと粒で2度おいしいじゃなくて何度もおいしい。20代や80
代の芝居なんて、なかなか経験できないから。ちょうどブラッド・ピ
ットの逆だね」。自身も映画「レイン・フォール 雨の牙」(4月
25日公開)でハリウッドに進出する椎名にとっては、同世代のブラ
ピが強力なライバルだ。
主人公の親子3代の警官役の江口洋介(41)、吉岡秀隆(38)
、伊藤英明(33)と対峙(たいじ)する早瀬は、太平洋戦争中に体
験したトラウマから3人を次々と事件に巻き込んでいく。20年来の
付き合いという鶴橋康夫監督は「昭和、平成を生き抜いてきた現在
80歳を超える人たちの挽歌(ばんか)であり、そう時代を生きてき
た代表選手をやってもらうのは桔平しかいない」と指名。「1人の役
者で通さないと、今回の早瀬という人間の人生を語れない」との思い
から椎名ひとりに任せた。
特殊メークは一切せずに、ペンでしわを描いたり、行きつけの歯科
医院で歯の治療の綿を口にふくんだりして、老人に変身した。「メー
クではなく、芝居や立ち姿、話し方で見せたかった」。ラストの伊藤
との14分間の壮絶な対決シーンは、監督ならではのカメラの長回し
で一気に撮影した。「役者を信頼してくれるから、ものすごく主観に
もなれる。この仕事の喜びですね」。無名のころからドラマに起用し
てくれた鶴橋監督を「鶴橋組は僕の中では特別な存在」と慕う。
「戦争の体験を引きずりながらどう歩いていくか。実際に戦地から
帰った方が今もご存命であるという責任感はあった」。渾身(こんし
ん)の怪演で椎名が新境地を開いた。
◆警官の血 直木賞候補にもなった作家・佐々木譲氏の警察小説を
初映像化。終戦から現代まで親子3代の警察官の生きざまを通して、
人間の正義と闇を描く。ドラマとしては異例の150人のキャストも
話題で、木村佳乃、佐藤浩市、寺島しのぶ、高橋克典らが共演。
2009.2.2 スポーツ報知
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20090203-OHT1T00037.htm