日曜劇場『SCANDAL』の感想を教えてください。
『女性って強いなぁ…』と改めて認識したドラマでした(笑)。
脚本の井上由美子さんが女性だからか、ものすごく冷静に女性の本質や強さを見ているんですね。特に貴子たちがそれぞれの夫なり、それ以外の男性と2人きりになるシーンで、女性の『強さ』や『したたかさ』を感じました。
男性側がイニシアチブをとっているように見えても、実はいつでも貴子たち女性側が舵取りをしているんですね。
だから高柳家、河合家、鮫島家は、奥さんが本気で怒ったときには、ダンナたちは「ちょっ…ちょっと待ってよ」と気弱になってしまう。
でも新藤家のたまきと哲夫だけは、なぜか危うさを感じていましたが。
これだけ上手く女性の裏と表を描けるのも、女性を冷静かつ深く観察している井上さんだからだと思います。本当にお見事です。
このドラマは、女性視聴者は「そーなのよー」って貴子たちに共感しながら見れるけど、男性視聴者はかなりドキッとしたり、ハラハラしたりしていたんじゃないでしょうか。
男性は痛いところを容赦なくえぐられたドラマだと思います。
勝沼龍太郎はどういう男性だと思って演じてきましたか?
女性に対して「この馬鹿主婦ども」なんて言葉を投げつける粗野な男なんですが、今まであまり演じたことが無いタイプでした。
だからとても新鮮な気持ちで、楽しく勝沼をやることができましたね。
「この馬鹿主婦ども」などと言いながらも本当に馬鹿だとは思っていない、意外と女性に対してシャイな部分がある男だと思います。
でも貴子たち4人には『主婦がナンパごっこなんて!』という、どうしても認められない気持ちがあったんだろうと。それは昔、奥さんが年下の男と駆け落ちして、行方不明のあげく死んでしまったという彼の過去があるからだと思うんですが。
だから貴子たちに対しては一方的に『主婦なんだから、家庭を守れ!』という要望があるんですね。
でも小日向文世個人としては、今時そんな男は古いかなと(笑)。
主婦は主婦なりの大変さがあるし、外に出たい人もいますし、僕も一方的に女性に男性の理想を押し付けられないなという気持ちがありますから。
勝沼は訳もなく粗野なわけではなくて、背負っている悲しい過去が、彼にあんな態度を取らせているということです。それは僕も判るし、そういう勝沼が好きでした。
勝沼はたまきのどこに惹かれたのでしょうか?
たぶん彼女が背負っている悲しみに、勝沼が共感したんでしょう。
愛する息子の死と、それによる夫婦間の埋まらない溝を、同じような悲しみを抱えていた勝沼は感じ取ったんでしょうね。
だからこそ、彼女に対してはズケズケと失礼な言葉を投げつけたりして、勝沼自身の悲しみを見せないよう押し隠していたんだと思います。
あの4人の女性のなかで一番たまきが弱い人なんですよ。いつもわーって好きなこと言ってイニシアチブを取ろうとするけど、それも弱さの裏返しというか。
むしろ無口で気弱そうなひとみみたいなタイプの女性が一番強い。
最年長で自由奔放なたまきがとても弱くて、そんな彼女を男性は放っておけないんですよね。勝沼もそうだったと思います。
共演者とのエピソードを教えてください
全10話を通して、ご一緒した回数が多いのが、たまき役の桃井かおりさんです。桃井さんとは初共演ですが、『どんな人なんだろうと』と、ちょっと不安でした。今まで画面を通してみてきた限りでは、とても強い女性なんだろうと予想していたんですが、意外にも4人の女優のなかで一番子供っぽい人だった(笑)。常に無邪気で純粋で、幼い子供のように目をきらきらさせてしゃべる様子がかわいくて。
でも演技には、ものすごく真剣で手を抜かない。毎回収録は、舞台で即興劇をしているような緊張感がありました。桃井さんは、常にドラマを面白くしようとしていて、それがとても刺激になりましたね。
男性陣では雄一役の光石研くんとのシーンが多かったけど、実は彼とは古い付き合いで。最近は、雄一みたいな冷たい男の役が多いみたいですが、本人はむちゃくちゃ面白い人なんですよ。共演することが多いので、今回も楽しく仕事できましたね。
甘利役の小浜正寛さんともいつもツーショットでしたけど、「うるせえ」と言い放つような一方通行のセリフが多かったので、もうちょっと掛け合いというか会話が膨らめば良かったな。それが残念でしたね。
久木田役の加藤虎ノ介くんとは、シリアスなシーンばかりでしたが、撮影の合間に劇団のこととか故郷のこととかいろいろ話しましたね。
彼も非常に役にのめりこむタイプで、久木田も一生懸命演じていました。また違うドラマで一緒になれたらいいなと思います。
その他の共演者の皆さんもとても大人だったので、現場でも落ち着いて収録に臨めました。
視聴者へのメッセージをお願いします。
今頃、すべての謎が解けて視聴者の皆さんもテレビの前で「あー、スッキリした!」と思っていることでしょう。
まあ、大人になるといろいろと大変なことがあるけど、楽しいことも同時にたくさんあるんだよ…とお伝えしたいですね。
苦楽がめぐりめぐって、人生は飽きないですというのが、僕からのメッセージです(笑)。