迫り寄る捜査の手に怯えながら、和賀(中居正広)はいつのまにかピアニカを
抱えたまま眠ってしまっていた。
そんな中、亀嵩に迷い込んだ親子が“大畑事件”の犯人・本浦千代吉(原田芳
雄)であることを知った今西(渡辺謙)は、本浦親子の故郷である石川県へと
向かう。現地に着くと、そこは一面ダムであった。彼らが住んでいた大畑村は
、事件の直後にダムの底に沈んでしまったのだ。今西は、村に住んでいた住民
に話を聞きに行くが、本浦千代吉の名前を出すと誰もが「千代吉は鬼だ」と言
って、顔色を変えて去ってしまうのだった…。今西は、村人が負っている傷は
一体何なのか、ダムを見つめながら考えていた。
一方あさみ(松雪泰子)は血のついたコートを部屋に隠し、家の前で張り込み
をしている刑事に怯えていた。そして今西に1月4日の夜のことを聞かれた唐
木(松岡俊介)と宮田(岡田義徳)は、あの日の夜和賀とあさみに何があった
のか、気になっていた。
翌日、田所(夏八木勲)に呼ばれた和賀は『宿命』がサミットのオープニング
セレモニーの曲として選ばれたという報告を受ける。「その時はサミット用に
曲をアレンジしてもらうことになるかもしれない」と言われた和賀は、複雑な
心境で田所に笑顔を返した。
マンションで和賀が作曲に打ち込んでいると、綾香(京野ことみ)が部屋に
来る。和賀の誕生日を一緒に祝おうと、ケーキを持ってやって来たのだった
。しかし和賀はそんな綾香に「帰ってくれ」と怒鳴りつけてしまう。ショッ
クを受けた綾香は和賀の言う通り部屋を後にするが、その帰り道に張り込み
をしている吉村(永井大)の姿を見かけてしまう。綾香の心は不安に包まれ
た…。
大畑村でこれ以上の手がかりが掴めないと感じた今西は、その足で和賀の出
生地・長崎へと向かう。市役所で戸籍を調べている内、和賀の両親は和賀が
10歳の時に集中豪雨の水害で亡くなっていたということが解る。その時の水
害で生き残ったのは、和賀ひとり。そして、和賀と同じ年の施設の子供・服
部武志が行方不明であった。今西は当時のことを知る園長先生に武志の話を
聞きに行く。そしてなんと“武志の腕に傷があったか“という今西の質問に
、先生は「そういえば、あったような」と答えたのだった…。
警察の捜査が気になって作曲が思い通りに行かない和賀は、何よりも大切に
していた自分の手を、床に何度も何度も叩きつけていた。その形相はまさに
、三木(赤井英和)を殴りつけたときの形相であった…。翌朝、そのまま床
で寝てしまい目を覚ました和賀は、側にあった新聞の記事に目を奪われる。
それは『大畑事件 本浦千代吉死刑囚の病状悪化』という記事だった。
忘れようとしている父親の容態を期せずして知ってしまった和賀は大きく動揺
する。そして、自分はなぜこの『宿命』という曲を創ろうと思ったのか、本当
の理由に気付く。その時の和賀の脳裏に聞こえてきたのは、25年前に亀嵩で
生き別れになった父、千代吉の声だった。そして和賀はまた再びピアノに向かっ
た。
夜、今西は再びあさみの部屋へ向かう。そして彼女に言った。「あなた、1月
4日の夜、蒲田にいましたね」と。そして同じ時間、和賀の部屋には田所が訪
ねていた。和賀は田所に「君はなにを警察に嗅き回られているんだ」と言われ
…。