高度な技術を持つ外科医・都倉隆(織田裕二)は、事務長の安藤浩(石黒賢)にヘッド
ハンティングされて、全国から優秀な医者が集まる泉田病院にやってきた。都倉は教授
に利用されるだけの大学病院に嫌気がさし、実績に見合った報酬を手にできる病院への
移籍を決意したのだ。
着任初日、急患受け入れの要請が入る。その患者が強盗殺人犯だと知った都倉は、院長
の泉田慶一郎(長塚京三)に病院の創立25周年パーティに来るよう命令されるが、それ
に背いて患者・及川(東幹久)を受け入れ、緊急オペを行う。及川は指名手配中の強盗
殺人犯で、刑事・水澤由希子(松雪泰子)に胸を撃たれて重傷を負っていた。
犯人を追いかけ、追い詰めた由希子は目の前に現れたプールを見て我をなくし、至近距
離で及川を撃ってしまったのだ。由希子は水に対して、極度な恐怖心を持っていた。都
倉の技術により及川は一命を取り留める。だが、ギャンブル代欲しさに子供の目の前で
両親を撃ち殺した及川に対し、由希子の中で激しい葛藤が沸き起こっていた。
一方、パーティでは外科スタッフ強化の為、ニューヨークから呼び戻された慶一郎の長
男・俊介(阿部寛)が登場、場内の注目を浴びていた。
“強盗殺人犯が警官に撃たれ重傷”──翌日そのニュースは、マスコミが一斉に書き立
て世間を騒がせる。そして泉田病院にも多数の報道陣が押しかけていた。
自分の命令を聞かなかった都倉はクビだと言っていた慶一郎だったが、思わぬ宣伝効果
にほくそえみ、急遽病院の記者会見を開く。そして都倉を主治医として同席させる。
席上、5メートルという至近距離から及川を撃ったことを都倉に暴露され、抗議に向か
う由希子。「あなたはどうして医者になったの?」と問う由希子に「患者が生きるか死
ぬか、最高のギャンブルでしょ」と都倉はうそぶく。
病院で及川の回復を待つ由希子の前に両親を殺された子供・浩太(吉武怜朗)が現れる
。由希子は及川を殺そうと必死になる浩太をおさえるが、その様子を見ていた都倉の悲
しみに満ちたまなざしにドキリとする。「あんなことするヤツに生きる資格があるの?
」例えどんな残忍な人間であっても殺してはいけない。それは医者であれ刑事であれ同
じである。しかし、一人の人間として許せない感情があるのも事実だ。その疑問が心の
中で押さえきれなくなっていた由希子は思わず都倉に詰め寄った。
その時、突然エマージェンシーコールが鳴り響く。及川の容態が急変したのだ。再手術
を行う都倉たち。だが、及川の心拍モニターがフラットを示す。何かを考えた後、都倉
は黙々とオペを再開、そして再びモニターは動き出す。ホッとした慶一郎たちは同時に
そのすばやい都倉の手さばきに感心する。
手術は成功し、及川は警察病院へ移送される。慶一郎は安藤に「都倉の報酬を見直せ。
宣伝費だと思えば安い買い物だ」と告げる。
及川が助かったことにホッとしている由希子の前に都倉が現れる。「あんな奴は裁判に
引きずり出してふさわしい罰を与えればいいんだ」そう言う都倉に、「あの時のあなた
、あの子と同じ目をしていた。自分が愛するかけがえのないものをなくしてしまったよ
うなそんな目」と気になっていたことを由希子は伝えようとする。だが、都倉は「外科
医の仕事は切って、剥がして、止血して、縫う。…テクニックが全てなんだ。ココ(心
)は必要ない」と冷たく返事をして去っていった…。
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