春の北海道で、東京からやって来た少年・太一は、一匹の子ぎつねに出会いま
した。太一は母親とはぐれた子ぎつねを、放っておくことは出来ませんでした
。子ぎつねの姿に、母親が仕事で忙しく、いつもひとりぼっちで淋しい思いを
している自分を重ね合わせたのです。太一は母に預けられた森の動物診療所に
子ぎつねを連れ帰り、一生懸命に育て始めます。その様子を時に厳しく、時に
温かく見守る診療所の獣医・矢島。子ぎつねの目と耳が不自由なことに気付い
た矢島は、医師としての限界に心を痛めるのでした。「まるでヘレン・ケラー
だ」という矢島の一言から、太一は子ぎつねに“ヘレン”と名付け、やがてヘ
レンは太一にだけは信頼と友情を示すようになるのですが……。
切ない運命を背負いながらも与えられた命を生き抜く子ぎつね、母親を恋しく
思いながらも涙を見せないけなげな少年、医師として、親としての生き方を模
索する獣医──彼らが結び合う心の絆を通して、家族の再生と生きることの素
晴らしさを描く、最高の感動作が誕生しました。原作は、キタキツネの生態調
査の第一人者で、傷ついた野生動物の保護・治療・リハビリに取り組み、写真
家・エッセイストとしても活躍している竹田津実の「子ぎつねヘレンがのこし
たもの」(偕成社刊)。やさしさに満ちたほのぼのとした写真と、生きること
の意味を問いかける心に沁みる文章で、実在した目と耳の不自由な子ぎつねと
過ごした日々が綴られています。このベストセラーの実話をもとに、新たなオ
リジナル・ストーリーとして創られたのが、映画『子ぎつねへレン』なのです。
太一を演じるのは、TVドラマ「みんな昔は子供だった」で注目された深澤嵐。
たった一人の家族である母親と離れて、都会から慣れない土地へやって来た太
一が、小さな命の輝きを感じとることで、自身もたくましく成長していく姿を
溌剌と演じています。
太一の母親の恋人で、彼を預かる獣医・矢島を演じるのは、『世界の中心で、
愛をさけぶ』『解夏』に主演し、今やヒット作には欠かせない存在となった大
沢たかお。真っ直ぐすぎる性格のため人付き合いが苦手で、一見ぶっきらぼう
ですが、本当は情に厚い矢島を味わい深く演じています。太一の母・律子には
、ドラマや舞台で活躍、3年ぶりの映画出演に本作を選んだ松雪泰子。カメラ
マンとして世界中を駆け回り、側にいられない代わりに、明るく前向きな生き
方を息子に示す魅力的なシングル・マザーに扮しています。矢島の娘・美鈴に
は、『HINOKIO』にも出演、人気急上昇中の若手女優、小林涼子。
その他、矢島の恩師である獣医大学の教授・上原には、映画・テレビなどで多
彩な才能を見せる藤村俊二、森に住む謎の老婆には、数多くの舞台に出演し、
映画・CMでも活躍中の吉田日出子、派出所の警官には『真夜中の弥次さん喜多
さん』『妖怪大戦争』の阿部サダヲ、太一の担任の山口先生には20~30代の女
性に圧倒的な支持を受けるカリスマモデルであり、女優としても活躍中の田波
涼子など個性的な顔ぶれが共演。
監督は、「王様のレストラン」「古畑任三郎 すべて閣下の仕業」「白い巨塔」
など数多くのヒットドラマを手がける河野圭太。地球に生まれたすべての命を
慈しむという原作のテーマを守りつつ、大胆に新たなストーリーを構築した脚
本は、『パコダテ人』『風の絨毯』の今井雅子。撮影は『壬生義士伝』『血と
骨』などの日本映画界を代表する名カメラマン、浜田毅。本作では北海道オー
ル・ロケを敢行、さえぎるものが何もない青い大空、大地の呼吸が聴こえる緑
の平原、色鮮やかな花々が咲き誇る原生花園など、美しく壮大な自然をスクリ
ーンに焼き付けました。また、照明を『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE
』の松岡泰彦、美術を『赤い月』『単騎、千里を走る。』の瀬下幸治が手がけ
ています。