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女優 松雪 泰子さん(33) 前向きに生きる大切さ伝えたい  女優として円熟期を迎えた、佐賀県鳥栖市出身の松雪泰子さん。映画「フラガール」 では、さびれた炭鉱の町を再生へと導くダンス講師を熱く演じています。寒いロケ地の こと、フラダンスにこめられた思い、それから、例の歌のことも教えてくれました。 ─福岡に来ると、「帰ってきた」って感じになりますか? 松雪:なりますね。(佐賀・鳥栖の)高校時代、休みのたび買い物に来たり、遊び に来たり。すっかり空気になじんだ思い出の地ですから。 ─「フラガール」のロケ地は、九州から遠く離れた東北・福島。いろんな面で大変だ ったのでは。 松雪:ロケがあったのが今年の1、2月。かなり寒かったです。広い畑の真ん中や 橋の上で撮影していると、強い寒風に吹き飛ばされそうになるし。でも魚は おいしく、温泉に癒やされ、地元の方にも九州の人みたいに温かい心で接し ていただいたので、印象に残るロケでした。 ─今回は元プロダンサーで、地元の少女たちにフラダンスを指導する先生役。新境地 でしたね。 松雪:ハードルは高いけれど、新しいことにチャレンジできる楽しみがありました。 レッスン期間は3カ月で、1日8時間はスタジオにこもっていました。ハード でしたね。「先生」ですから、「生徒」の女優さんたちにレクチャーできるレ ベルにならなくてはいけないし。 ─圧巻は、1人でタヒチアナダンスを踊るシーン。東京から来た「へんな先生」を疑 っていた町の少女たちの心を、ぐっとつかみました。 松雪:結構プレッシャーでしたね。毎日汗だくでトレーニングしたかいあって、納 得のゆくシーンが撮れました。 ─全編に踊りの魅力があふれています。 松雪:映画の中でも言ってますが、フラは大地と一体となって愛を表現するスピリ チュアルな(精神性の深い)踊り。解放され、癒やされるような感覚になり ます。若手の女優たちも、ものすごく熱心にレッスンして素晴らしいダンス シーンが繰り広げられます。 ─「フラガール」の時代設定は昭和40年。ヒットした映画「ALWAYS 3丁目 の夕日」と同様に、「懐かしの昭和」を描いています。 松雪:昭和40年って、変化の時代だったと思います。炭鉱が閉山に追い込まれる シチュエーション(状況)もそうですが、古い物が新しい物に置き換わる時 代。そこに生まれる人々の生き方、特に葛藤(かっとう)が前面に出ていま す。そして昭和40年は希望を感じさせる時代。前向きに生きる人たちが、 何かを新しくつくり出すことの素晴らしさを教えてくれます。 ─その半面、抜き差し難い貧しさもあった時代。 松雪:そうですね。東北の炭鉱の町、という土地が発する思いを感じながら演じま した。映画には貧しさに負けず、未来を信じ、助け合って大きなことを成し 遂げる人たちが出てきます。現代って、殺伐とした時代じゃないですか。た くさん情報があって、ほしい物はすぐに手に入るけど、なんだか生きること に張り合いがない。もっと頑張って生きて、何かを生み出そうという大切な ことが忘れられている。この映画を見た人が、そんな気持ちを思い出してく れたら、本当にうれしいです。 ─ちょっと話は古くなりますが、はなわさんの「佐賀県」で佐賀出身を公表してな いと、歌われてしまいましたが。 松雪:ある日突然、事務所にファクスが1枚送られてきて、「新曲の歌詞に出てい ます」って報告が。佐賀出身は公表していたのに…。同じ佐賀の人にネタに されちゃった、と笑うしかなかったです。 ─佐賀をはじめ九州のファンにメッセージを。 松雪:心に残る素晴らしい映画です。ぜひ劇場に足を運んでください。 (塩田) ▼プロフィル  まつゆき・やすこ 1972年11月28日生まれ、佐賀県鳥栖市出身。91年、T Vドラマ「熱血!新入社員」で女優デビュー。「白鳥麗子でございます!」でブレイク 後、「きらきらひかる」(98年)「救命病棟24時」(2001年)などに出演。映 画「アナザヘブン」(00年)「子ぎつねヘレン」(06年)のほか、「夜叉ケ池」( 04年)「吉原御免状」(05年)など舞台にも活躍の場を広げている。 映画「フラガール」 ▼映画「フラガール」  昭和40年、福島の炭鉱が閉山の危機に直面した。ヤマで働く人々は、町に「楽園ハ ワイ」のリゾート施設を作るプロジェクトに挑む。目玉は町の娘たちが踊るフラダンス 。かつてSKD(松竹歌劇団)で活躍した平山まどか(松雪)は、指導者として町に赴 くが、踊り手は素人ばかり。まどかはばかにするが、やがて少女たちのひたむきな熱意 に触れ、忘れかけていた情熱をよみがえらせる。李相日監督。出演はほかに豊川悦司、 蒼井優ら。23日からシネ・リーブル博多駅などで全国公開。 =2006/09/20付 西日本新聞朝刊= 2006年09月20日15時46分 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/get/20060920/20060920_001.shtml