やっぱり「笑顔」が好き
小林聡美(38)は、不思議な親しみやすさを感じさせる女優だ。
インタビュー中もとにかくよく笑った。決して大げさではなく、大人
のかわいらしさを感じさせる笑い方が、コミカルな演技同様、見る人
に親しみを覚えさせるのだろう。14歳でデビューして以来、ドラマ
、舞台、映画、CMにと幅広く活躍し、夫は人気脚本家の三谷幸喜氏
(42)。夢は「楽しい老後」という小林は無理せず楽しく、我が道
を歩いている。
さりげない色彩
7月から主演している日本テレビのドラマ「すいか」にちなんでな
のか、小林はグリーンのトップスに赤いロングスカートという“すい
か色”ファッションで現れた。ユーモアを感じさせるさりげない演出
。「よろしくお願いしまーす」とぺこりと頭を下げ、ちょこんとソフ
ァに腰掛ける姿は小柄なせいか、大人のかわいらしさを感じさせる。
インタビュー中も、とにかくよく笑った。「好きなところも嫌いなと
ころも、明るいところ」と言うのもうなずける。しかし性格は気さく
だが、愛想がないと自己分析する。
小林 「自分のことを人に話すのって抵抗がありますよ。自分のこ
とを話してもそんなに分かってもらえないじゃないですか、絶対。そ
うするとどう話していいのか分からないんですよ」。
口数が多い方ではない。だが1度口を開くと、自分の言葉ではっき
りと思いを伝える。それが「すいか」で演じる基子と違うところだ。
基子はまじめできちょうめんだが、自分の意見をはっきり言ったこと
がなく、地味にコツコツと働くOL。演じていながら思わず突っ込み
たくなるという。
小林 「もうそういうことはさぁーって(笑い)。あまりにも不器
用すぎてというか。頑張ってくれーという感じですよ。私に輪を3つ
くらいかけて愛想がなくてさえなくて地味。どう演じたらいいんだろ
う、難しい役だなと思いました。ただ、いちいち立ち止まっていると
、ドラマが終わらないですからね。とりあえずガーッと走り続けます
よ」。
女優になって24年。79年、中学2年の時に武田鉄矢主演のドラ
マ「3年B組金八先生」のオーディションに合格。たのきんトリオの
田原俊彦、野村義男、近藤真彦、三原じゅん子と同じ生徒役でデビュ
ーした。
小林 「別に、そんなすごい志があった記憶がないんですけど(笑
い)。ドラマはよく見ていたけど、やったことがないし、面白そうだ
と思ったから。どんなもんかやってみるかなって。お習字ぐらいしか
習い事もしていなかったしね」。
きみえ役で転機
女優として転機の1つだったのが、88年にスタートしたフジテレ
ビの深夜番組「やっぱり猫が好き」だろう。舞台はマンションの一室
のみというシチュエーションコメディー。もたいまさこ、室井滋、小
林の3人がふんする恩田3姉妹の何げない会話のやりとりがウケた。
小林はしっかり者の三女きみえ役。だが酔っぱらうといろいろな物を
拾ってきたり、寝言が激しいなどの癖を持ち、豊富な物まねレパート
リーを勝手に披露する強烈なキャラクターを演じた。
小林 「今までにない仕事だったから、楽しかったですね。やった
ことがないことを最初にやる時って新鮮じゃないですか。映画の時も
初めての映画は本当に楽しかった。ある意味「金八先生」も初めての
ドラマだったから楽しかった。新しい仕事をする時が転機というわけ
じゃないけど、やっぱり面白いなと思うかな。ただ「やっぱり猫が好
き」は大変でしたけど(笑い)。覚えるのも大変だけど、長く続けて
いくと、いつも面白い話ができるわけじゃない。どうやって面白くし
ていくかという難しさがありましたね」。
収録で進行を忘れると、いい加減なことを言ってしまい、それを修
復するためにみんなで取り繕っているのが、アドリブ風になってしま
う。それを修正するのがしっかり者のきみえの役目だった。
小林 「みんないい加減ですからね(笑い)。3人はできることな
ら脚本通りにやりたいですよ。楽だし。でも忘れちゃうから「そこは
まだじゃん」とみたいな感じで戻したりしていましたね。脱線するの
は? 特に室井さん(笑い)」。
クヨクヨしない
小林の仕事ぶりは全力投球というよりも、1つずつ着実にこなして
いく。自分のペースを崩さない。しかしマイペースの小林でも衝撃を
受け、つらいと思った経験はある。23歳の時、約1カ月半、テレビ
番組のレポーターの仕事で、中国・雲南省の少数民族の村を訪れた時
のことだ。
小林 「過ぎてしまうと、そういうつらさは忘れちゃうんですけど
、本当に孤独で、お風呂とかもなくて、電気もなくって。体も虫に刺
されて、全然電話もできないし、手紙ももらえないし。それに本当に
いろいろな人がいるんだなと思いましたね。お風呂に入らない人がい
るとか。今はすごいいい経験だったけど、当時は本当に生きて帰れる
のかなと。その辺で爆弾が爆発するし。山奥で頭から血を流している
おじいさんとすれ違ったり。美しくて感動的というよりも、うわぁー
という驚くようなところをいっぱい見て、ガーンって(笑い)。仕事
だったけど、つらかった」。
そんなカルチャーショックを経験したから、つらい時でもやってい
けると思ったという。多少のことでは動じなくなった。
小林 「そういうところでボーッと暮らしている人たちとか、幸せ
そうに暮らしている人たちがいっぱいいたりしたので、1つのことと
かで悩んだりしても、しょうがないじゃんと。どんなところでも幸せ
に暮らしていく人がいるんだということが分かって、1つのことでク
ヨクヨしていてもしょうがないじゃん、道があるよと、何となく思い
ましたね」。
「やっぱり-」では、人生の転機も迎えた。脚本を書いた三谷幸喜
氏と結婚した。妻は売れっ子女優、夫は人気脚本家。すれ違いの生活
になりそうだが、一緒に過ごす時間は意外と多いという。
小林 「(夫は)私が帰れば家にいるんで。家で仕事をしています
からね。仕事部屋とかではなくて(執筆を)リビングでやっているん
で、すごい迷惑なんですよね(笑い)。ごはんを作ってくれたりしま
すよ。気分転換に作ったものを食べさせられるみたいな。まぁ、おい
しいですけどね」。
カッコつけない
演じることは大好きだ。見て喜んでもらえるのがうれしいし、自分
が楽しいから続けている。日常と違うところでいつも新しいことに挑
戦しなければならない仕事だから。
小林 「うその世界を楽しんじゃっているんです。アハハハハ。た
だテレビの前で1時間座ってテレビを全部見続けるって、相当なエネ
ルギーがいるんだなと最近すごく思いますね。作る側もちゃんと1時
間見させるようなものを作らないといけない。すぐにチャンネルを変
えられて、もういいよって、消しちゃったりされないようにね(笑い
)」。
女優をやめようと思ったことはないが「お前なんかやめちまえっと
大勢の人に言われたら、じゃいいよ、やめますよという気持ちはいつ
でもある」という。できることを無理しないでやっていきたい。
小林 「そんなに必要とされていないのに、自分も嫌だし、みんな
にも迷惑かけるし。でも今は幸せだからそんなことを言えるのかもし
れないですね。夢は楽しい老後。庭をいじったり、静かな老後を送り
たい。夫婦一緒にいるかどうか、分かりませんけど(笑い)」。
聡ちゃんと一緒だと楽しい
日本テレビ「すいか」で共演し、プライベートでも親しい歌手小泉
今日子(37) 小林聡美はオッチョコチョイである。舞台の時のこ
と、練習用のジャージーをはいたまま「行ってきまーす!」と元気に
本番ステージに向かったりする。小林聡美はまじめである。やはり舞
台の時のこと、連日誰よりも早く劇場入りし、体を温めるため、ロビ
ーをグルグル歩き回ったりする。小林聡美は頼りになる。本番中に私
が笑ってしまったりしても決して動じず、受け止めてくれたりする。
気付けば案外、長い付き合いですね。いつも感じるのは「聡ちゃんと
一緒だと楽しい ! 」ということ。ベタベタ仲良く楽しいのじゃなく
て、同業としての信頼感のもとで楽しく仕事ができるという感じ。そ
んな風に感じられる人はほかにはいません。掛け替えのない存在です。
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◆日本テレビ「すいか」(土曜午後9時) OL・基子(小林)と漫
画家の絆(ともさかりえ)を中心に、賄い付き下宿に住む女性たちをコ
メディータッチで描く。共演は浅丘ルリ子、市川実日子、友情出演の
小泉今日子ら。
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◆小林聡美(こばやし・さとみ) 本名・三谷聡美。1965年(
昭和40年)5月24日、東京生まれ。79年にTBS「3年B組金
八先生」でデビュー。82年に大林宣彦監督の映画「転校生」の主役
に抜てきされ、その年の各映画賞の新人賞を総なめにした。88年に
始まったフジテレビ「やっぱり猫が好き」で個性派女優としてお茶の
間の人気を得た。95年10月に脚本家の三谷幸喜氏と結婚。テレビ
ドラマ「ギフト」映画「てなもんや商社」舞台「おかしな二人」など
に出演。エッセー「マダムだもの」「東京100発ガール」などの著
書もある。
写真=「本当は無愛想なんですよね」と小林さん。インタビューの冒
頭はその通り、緊張していた感じだった。でも、時間が経つにつれて
見せてくれた笑顔はとても素敵でした。あっけらかんで、さっぱりし
ている。CM等で抱いていた「そんなことでくよくよするなよ」とい
ったイメージ通りでした。「こういう人をお嫁さんにできたらいいの
になあ」と心から思っちゃいました (撮影・小沢裕)
2003.08.10 日刊スポーツ (取材・近藤由美子)
http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/interview/2003/sun030810.html