ここちインタビュー 第3回 小林聡美さん(女優)
◇役柄も、庭の花も、すべてのことはめぐりくる”縁”だと思い
ますね
「あなたにとって、心地いいものとは何ですか」
その問いに、迷うことなく、
「山です」
と即答した小林聡美さん。しかもこちらが拍子抜けしてしまう
ほど、気さくな調子で。わずかな時間ができるとパッと荷造りし
、愛犬・とび君を連れ、八ケ岳の山荘へ向かうという。行けると
きは週1の頻度で。そんな日々が、もう3年以上続いている。
「なぜ山に行くのか、と聞かれたら、単純に“行きたいから”
と答えます。仕事や都会からのエスケープというより、つい足が
向かってしまうという感じ。木々に包まれていると安心するし、
体調もいい。とびにとってもいい環境だと思う」
元来、自然と触れ合うことが大好き。山荘ではもっぱら、とび
君と森林浴を楽しんだり、小枝を拾ってきてたき火をしたり。“
山遊び”を堪能しているという。
「年齢を重ねるごとに、より自然への関心が高まってきました
。自宅の植物にしてみても、“葉っぱが水を欲しがってる!”と
、声が聞こえるようになってきた気もするし(笑い)」
山荘では、長年の念願だった花壇を制作中。どんな花を植える
か、肥料をどれくらいまくか……いまはまだ手探り状態。手本に
するのは、アメリカのネーチャリスト、ターシャ・テューダーの
庭だ。
「ターシャいわく“理想の庭を作るには12年かかる”。私は
、まだ始めて2年目。慌てずのんびり、土地と相性の合う花を育
てていければいいなと思っています」
すべては必然。めぐり合うべきときにめぐり合うはず--。そ
れが、小林さんの人生におけるモットーなのだという。もちろん
仕事でも同じ。
「与えられたものを受け入れて、表現するのが、私の役割。ど
んな役を演じることになったとしても、それも縁だと思っている
んです」
大きな話題を呼んだ映画「かもめ食堂」も、最新作「めがね」
も、自然あふれる風景のなかで人と人とが向き合い、心豊かに生
きる姿を描いた作品。地に足をつけ、自分らしく生きる小林さん
に来るべくして来た役柄なのだろう。
「『めがね』のロケ地、与論島は癒やしの島。ただ、気持ちよ
すぎて仕事モードにならなくて困りました。台本は頭に入らない
し、持って行った小説も一ページも読めないし。あとね、物欲と
いうものが一切なくなったのは自分でもビックリ!」
大らかに笑う小林さんの表情は実にイキイキ。自然に身を置く
人ならではの輝きを放っていた。
◇ ◇ ◇
こばやし・さとみ 65年東京都生まれ。映画、テレビドラマ、
舞台、CMなど幅広く活躍する。おもな出演映画に「キリコの風
景」「かもめ食堂」、テレビドラマに「やっぱり猫が好き!」「
すいか」など。エッセイストとしても人気があり、「マダムだも
の」など著書多数。
◇小林さんをささえるここちよい、ひと・もの・こと
その1:山遊び
その2:ターシャ・テューダーのDVD
アメリカ・バーモント州の小さな町で、自給自足の日々を送る絵
本作家ターシャ・テューダー。その簡素ながらも人間らしい暮ら
しぶりを記録したDVD「喜びは創りだすもの ターシャ・テュ
ーダー 四季の庭」(メディアファクトリー、4725円)は小
林さんのバイブル。「目指せ、ターシャの庭ですから!」
「めがね」
春、ある南の海辺にやってきたタエコ。宿の主人・ユージ、謎の
女・サクラをはじめ、めがねをかけた人たちに囲まれて日々ゆる
ゆると過ごすうち、タエコは自分らしさを取り戻していく。「か
もめ食堂」のキャスト、スタッフが再集結した話題作は、9月22
日からテアトルタイムズスクエアほか全国で上映。
取材・文/高倉優子
写真/菅野ぱんだ(D-CORD)
ヘア&メイク/宮田靖士
2007年8月24日 ここち 3号
http://mainichi.jp/life/cococi/news/20070823org00m100084000c.html