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http://www.4gamer.net/games/111/G011100/20100820077/index_2.html 前作KOF XIIが「新世代の新たなKOF」をコンセプトに開発されていたのに対し,「KOF イズム」=「KOFらしさ」の再構築を掲げて製作された本作。しかしながらKOF XIIで生 まれたハイデフ・グラフィックスは,前回高く評価されたこともあってか,今作でも継 承が行われている。  ところで,このKOF XII,およびKOF XIIIのキャラクターグラフィックスは,特殊な コンテンツパイプラインにて構成されていることをご存じだろうか。新KOFシリーズの キャラクターグラフィックスは,実は各キャラクターごとにポージング専用の3Dグラフ ィックスモデルをもとに製作が行われている。  2Dドット絵の前段階として,まず3Dモデルを用いたポージングやライティングなどを 行って描畫を行い,それを2Dフレームとして出力。これに対して,さらにイラストテイ ストの表情や陰影をドット絵として描くポストプロセスを施すという,2Dドット絵の工 程としては,かなり手間のかかる手順を踏んでいる。いわば,お手製・ハンドワークの ノン・フォト・リアリスティック(NPR)シェーディングを実踐していると考えてよい (?)。 久木野氏:  基本的なコンテンツパイプラインはKOF XIIIでも同じです。ですから今回も,グラフ ィックスの作業は相當大変でした。ただ,前作で試行錯誤していたこの製作スタイルも ,今作では洗練されました。デザイナー/プログラマの熟練度が上がったこともあって ,かなりスムーズになったという実感があります。  ──新生KOFにおける下絵ともいうべき,キャラクターのモーションを作り出す3Dモ デルは,キャラクターの體格や衣裝によって色々と幅がある。  とくにアテナや舞のような女性キャラクターの衣裝には,當然ながら(?)多くのボ ーンが仕込まれており,その動きは物理シミュレーションをベースにしながらも,ダイ ナミックや美しさを表現するために,手付けで修正することもあったという。パンチや キックのポージングやモーションも同様で,IK(Inverse Kinematics:逆運動學)をベ ースにしながらも,バトル時のリアルな臨場感が伝わるよう,わざと荒々しいアニメー ションになるような修正も行われたとのこと。 THE KING OF FIGHTERS XIII THE KING OF FIGHTERS XIII THE KING OF FIGHTERS XIII 一部のキャラクターには専用のアクションも用意されている。とくに舞への愛情はかな りのものを感じる THE KING OF FIGHTERS XIII THE KING OF FIGHTERS XIII THE KING OF FIGHTERS XIII THE KING OF FIGHTERS XIII 久木野氏:  あくまでドット絵の完成形をイメージしての3Dモデルなので,現実的には,拳が身體 に比べて大きすぎるとか,バランス的におかしい部分もあります。  ──こうした2Dアニメーション的な表現を行う際に,あえてバランスの崩れた3Dグラ フィックスを応用するという事例は,しばしばよくあることだ。スタジオジブリのアニ メ映畫のメイキングにおいても,同様の事例が紹介されたことがあったし,ゲームにお いても「NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム」でキャラクターのダイナミックな アクション表現を行うがために,手足バランスのおかしい3Dモデルを利用した事例もあ る。  実際にKOF XIIIにおけるグラフィックス製作の過程を示した素材が以下になる。 下絵製作用の3Dモデル [A]3Dモデルを元に作成した2Dグラフィックス,[B]イラストテイストに加工した仮キャ ラ,[C]ハイライト表現などを付け加えた本キャラ THE KING OF FIGHTERS XIII  3Dモデルの形狀や衣裝は,あくまで,ドット絵を起こす ための下地となるもののため,久木野氏の言うように完成形とはだいぶ違ったものにな っているのが分かる。衣裝のテクスチャは色分けを明示するためだけのものだし,表情 も目鼻立ちの位置が分かる程度の簡略化されたものになっている。  また,興味深いのは,3Dモデルへのライティングは拡散反射系のトゥーンシェーディ ングのみが行われていて,鏡面反射のハイライトは手付けで行われているという點だ。 この手付けのハイライト表現は,KOF'94から脈々と継承が続けられてきた「KOFグラフ ィックスの味わい」という感じがする。  なお,2Dに落とし込まれた完成形の2Dのドットグラフィックスは,ランタイムにおい て,3Dグラフィックスパイプラインのリアルタイムライティングが行われることはない という。ゲーム中,シーンの明暗変化や閃光などのエフェクト表現で色味が変わること があるが,それらは,あくまでプログラム的な色操作によるものだそうだ。  KOFシリーズでは,3Dグラフィックスを採用したKOFとして,すでに「MAXIMUM IMPACT 」シリーズがあるため,ナンバリングのKOFシリーズとしては,王道の2Dグラフィック スにこだわり続けたいという思惑があるようだ。 アテナはスカート裾のヒラヒラした動きに注目とのこと THE KING OF FIGHTERS XIII 時代を超え,受け継がれる「KOFイズム」  最後に,KOF XIIIプレイヤーやシリーズのファンに向けてのメッセージをお願いした ので,掲載しておこう。 山本氏:  開発も一段落し,私自分もゲームセンターなどに出向いて皆さんの対戦を見せてもら っていますが,とにかく対戦が熱く盛り上がっているようで嬉しいです。今後とも2D対 戦格闘ゲームとしてのKOFシリーズを盛り上げていかなくては,と身の引き締まる思い がしています。 久木野氏:  開発チームとしては,これまでにないほど気合いを入れて製作しましたので,とにか く遊び盡くしてくほしいです。今後ともKOFシリーズをよろしくお願いいたします  ──KOF XIIではグラフィックスのテイストが変わったことに加え,ゲーム性も変わ ったことで,従來のファンの中には驚いてしまった人達もいたようなのだが,今作KOF XIIIでは,ことゲームプレイに関してはシリーズの伝統を受け継ぐ,スピーディでダイ ナミックな展開が期待できる。筆者としてもこれまでのKOFシリーズが帰ってきたとい う手応えがあり,嬉しい限りだ。グラフィックスについてはKOF XIIのテイストを継承 しているものの,プレイフィールが従來のテイストになったことで,プレイしていても 違和感はまったくない。  ここ最近身を引いてしまった従來のKOFプレイヤー,またKOFシリーズ自體かなり久し ぶりという人も,ぜひ一度本作に觸れてほしいと思う。