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多彩な“愛”詰め込んだアルバム「LOVE BEBOP」
MISIAの12枚目となるニューアルバム「LOVE BEBOP」が1月6日にリリースされる。
2014年4月発表の前作「NEW MORNING」の完成直後に制作をスタートさせたという本作は
、最新シングル「オルフェンズの涙」をはじめ、「白い季節」「桜ひとひら」「
Candle Of Life」などの既発曲に4つの新曲を加えた全13曲を収録。制作過程で見付け
た「愛こそが新たなものを生み出していく=LOVE BEBOP」というテーマのもと、さまざ
まな愛の形を多彩なサウンドで高らかに鳴り響かせている。
約1年10カ月に及んだ制作期間を経て届けられる本作について、MISIA本人に話を聞いた
。
前作リリース前からスタートしたアルバム制作
──今回の取材にあたってニューアルバム「LOVE BEBOP」の制作進行表をいただいたの
ですが、2014年の3月にはすでに制作がスタートしていたことにまずビックリしました
。
11枚目のアルバム「NEW MORNING」ができた直後にはもう次の制作に入っていましたね
。前作の作業が終わった翌週くらいにプロデューサーから「次のアルバムなんだけど」
みたいな話をされたときは「早いな!」って思いましたけど(笑)。ただ2013年から1
年ちょっとかけて77本のツアー(「星空のライヴⅦ~15th celebration~」)を回って
いた時期でもあったので、ライブで映える曲を作りたい、アップビートの曲を歌ってみ
たいというモードだったんですよね。
──だからこそすぐに次の動きに移れたと。制作はまず鷺巣詩郎さんとのやり取りから
始まったそうですね。
はい。プロデューサーと「鷺巣さんの曲をしばらく歌ってないから今回はやりたいよね
」って話になったんです。鷺巣さんはロンドン、パリ、日本など世界中を行ったり来た
りされている方なんですけど、ちょうど日本に帰ってきてらっしゃるタイミングだった
ので、まずはそこで打ち合わせさせていただいて。お互いに最近よく聴いている曲や、
今いいと思っているサウンドについて話しながら、とにかく楽曲をどんどん作っていこ
うということになりました。
──かなりの数の楽曲がその段階で生まれたとか。
そうなんですよ。毎日2、3曲くらいのペースで鷺巣さんがどんどん作ってくださって(
笑)、結局20曲以上できたんです。そこからぜいたくにも曲をセレクトさせていただき
、日本である程度の骨組みを作ってから、2カ月後にはロンドンに行きました。
──それが2014年の6月のこと。
はい。まずはアデルさんも使ってらっしゃるEast Coast Studiosでバンドのレコーディ
ングをしたあと、Abbey Road Studiosでストリングスを録音しました。アビーロードで
のレコーディングに立ち会うのは初めてだったんですけど、リバーブをかけなくてもス
タジオ全体に音が響いてるみたいに深い音のするすごいスタジオだなって思いましたね
。私たちは、フルオーケストラが余裕で入るようなアビイロード内の「Studio One」と
いう大きなスタジオでストリングスを録ったんです。多くの有名な映画音楽もレコーデ
ィングされる場所で「スター・ウォーズ」シリーズの劇伴もそこだから、スタジオの廊
下にはたくさんポスターが貼ってありましたね。そこでできたのが「真夜中の
HIDE-AND-SEEK」と「オルフェンズの涙」です。
──しょっぱなでそんな素晴らしい2曲が生まれれば、それはもうアルバム制作自体、
勢い付いたでしょうね。
ほんとにすごい曲が最初にできちゃいましたからね(笑)。でも歌入れに関してはまだ
そこではやらず、できたトラックを日本に持ち帰り、その後にそれ以外の曲も含めてリ
リックを詰めていく作業をしていきました。
「LOVE BEBOP」の意味
──今回のアルバムは、それぞれの曲でいろいろなタイプの愛が描かれていますよね。
当初からこの方向性でリリックを紡いでいったんですか?
当初は「Candle Of Life」や「桜ひとひら」のように未来や平和への願いを書いてもい
たんですけど、最終的に愛というテーマに行き着いた感じなんですよ。制作作業の最後
にレコーディングした「LOVE BEBOP」と「Butterfly Butterfly」がきっかけだったん
ですけど。
──その2曲は2015年の10月にレコーディングされていますよね。
はい。ともにSAKOSHINさんが作ってくださった楽曲なんですけど、いただいた1曲に“
LOVE BEBOP”って聞こえるメロディがあって。そこでビバップの意味を改めて調べてみ
たところ、ジャズの中でそれまでの概念を覆すサウンドとして生まれたジャンルであり
、引いてはそれまでの決まりごとを打ち破って新しいものを作るっていう意味もあった
んです。それってすごくいい言葉だなって思ったんですよね。
──そんな意味を持つ「BEBOP」に「LOVE」というワードが付くことで大きなメッセー
ジが生まれますよね。「愛こそが常識を打ち破って新たなものを生み出していく」とい
う。
今って時代がすごく変わりつつあるような気がするんですよ。アメリカで同性婚が認め
られたし、日本でもそういった動きがあるじゃないですか。それって愛が常識を変えた
んだと思うんです。そう考えると、世の中にいろんな形の愛があったとしても結局1つ
の「愛」という形で集約されるよねと思って。そこで「Love is Love」という言葉が出
てきて、そのインスピレーションをもとに歌詞を書いていったんです。その結果、生ま
れたのが「LOVE BEBOP」と「Butterfly Butterfly」の2曲で、それがアルバム全体のテ
ーマにもなっていった感じなんです。
──なるほど。とは言え、その2曲の前に生まれたほかの楽曲群でも愛は描かれていま
すよね。
そうなんです。結局、今の私はそういうことが言いたかったんだと最後に思いました。
愛がすべてを変えていけばいい、そういうことが言いたくていろんな歌詞を書いてたん
だなって。
愛を持ってなんでもやろう
──今のタイミングで、愛を描いたメッセージがご自身から自然とあふれてきたことに
は何か理由があったんですかね?
生きているといろいろな選択をする瞬間に出会って、そこで利益や損得、あとは社会の
システムなんかにのっとって選んでしまうことってよくあるとは思うんです。でもそう
やって選んだものにはどこかしら矛盾が生じてくるし、いつしか必ず壊れていってしま
うんですよね。そう考えると結局は愛を持って選んだものしか残っていかないんだなっ
て、より強く感じるようになってきて。
──それは人に対してだけではなく、すべての物事に関してもそうですよね、きっと。
だと思います。音楽を作る上でもそれはすごく感じますから。今回、鷺巣さんとレコー
ディングをすることになったときには、とにかく好きなことをやろう、やりたいことを
やろうってプロデューサーが言ってくださったんですよ。お金がかかるかもしれないけ
ど、それはあとで考えようって。
──それこそ愛がないとできないことですよね。
そうそう。音楽への愛がないとそんなことできないですよね。今回はスティーヴィー・
ワンダーの「Songs in the Key of Life」でベースを弾いてるネイザン・ワッツにプレ
イしてもらったり、ロンドンやダラス、アトランタ、ニューヨークでレコーディングし
たり……本当にやりたいことをやらせてもらうことができて。それがすごく楽しかった
からこそ、「愛こそ」と言えるアルバムになったんじゃないかなって思いますね。
「君の言いたいことは昔から変わってないね」
──愛の描き方に関しては、年齢やキャリアを重ねたことでの変化を感じるところもあ
りますか?
10代20代で感じる愛の歌を無理やり書いたのではなく、大人になってわかったこと、今
の自分がわかる愛の歌を書いてみたという気持ちは強いですね。例えば夜と朝の景色が
それぞれ違うみたいに、愛には嘘もあるし真実もあるのよっていうことを今の私は知っ
ている。そういう気持ちを歌詞にしたいなと思うし、それは意識せずとも出てしまうと
ころでもあるとは思います。ただ、以前プロデューサーからあるテーマをもらって歌詞
を書いたら、「君の言いたいことは昔から変わってないね」って言われたことがあった
んです。自分では忘れていたけど、過去に同じテーマで書いたことがあって、そのとき
も同じような内容だったみたいで(笑)。
──と言うことは、MISIAさんが伝えたいことの根本、軸となる思いは変わっていない
んでしょうね。表現の仕方や視点が変化しているだけで。
そうなんだと思います。あと自分は表現者として歌詞を書きますけど、一方ではシンガ
ーとして歌を歌うという軸もやっぱり大きいものなんですよね。そういう意味では愛を
テーマにしたものに限らず、作詞家の方に代弁してもらう楽しさもあるんです。
──そこにも今のMISIAさんが伝えたい思いがしっかり反映されてるわけですよね。
はい。今回はher0ismさんと一緒に詞を書いてみたりとか、「花」や「流れ星」を里花
さんに書いていただけたのがすごくうれしかったですね。特に「花」なんかは、人の失
敗を許さない今の社会、ちょっとしたミスをみんなでバーッと責めてしまう今の時代に
対して何か言えたらいいのになって思っていた時期に出会えました。作詞をしていただ
いた曲も、自分で作詞をした曲も、やっぱり「今」伝えたいことなんですよね。ただ説
教くさくなるのはイヤなので、気持ちいいサウンドとともにそういった私の思いを聴い
てもらって、なんとなくメッセージを感じてもらえたらいいかなって思いますね。
6時間ぶっ通しで歌ってしまう
──今回も前作同様、全国ツアーと並行して作業が進められていったわけですよね。そ
れってものすごく大変なことなんじゃないかなと思うんですけど。
もちろん大変なところもありました(笑)。でも、ライブにしてもレコーディングにし
ても歌ってるときはある種の興奮状態にあるので、大変なこともすべて忘れられるんで
すよ。レコーディングでは6時間ぶっ通しで歌って、スタッフさんが倒れてしまうこと
もあるので、2時間ごとにアラームをかけてます。強制的に休憩するように。
──それがなかったらいつまででも歌えてしまう?
もちろん途中でお水とかは飲みますけどね(笑)。それだけ好きなことに出会えている
ことは本当に幸せだなって思うので、歌うこと自体はまったく苦ではないんです。
──でもライブとレコーディングでは歌い方にも違いが出ますよね。その切り替えにと
まどったりはしませんか?
レコーディングはある意味、答えのない世界なんですよ。このフレーズでいいのか、こ
の歌い方でいいのかみたいな部分で、自分たちとの闘いになる。だから満足するまでや
るしかないところがあるんですよね。
──だから6時間も歌ってしまうんでしょうね。
そうそう(笑)。でもライブの場合は、お客さんが拍手の大きさや歓声で答えを出して
くれるんです。そういった違いは確かにありますね。ただ、その両方を並行してやって
いることで、ライブで感じたエモーショナルな部分をレコーディングにそのまま反映で
きる、お客さんがくれた答えをそのままレコーディングでも表現できるよさがあるんで
す。だから楽しさしかないんですよね。……しいて言えば、ライブは体中で音楽を感じ
ながら歌えるけど、レコーディングはヘッドフォンで聴くから「もっと来て!」って思
っちゃう。大変なのはそれくらいかな(笑)。
歌でビートを作る
──数々のタイアップがついたシングル曲に加え、本作には4つの新曲も収録されてい
ます。それぞれ思い切り楽しんで、好きなことをやったんだろうなと感じられる仕上が
りですよね。
はい! ほんとに好きに作って、好きに歌った曲たちなので(笑)。楽しかったです。
私は作詞・作曲と同じくらいアレンジも楽曲にとっての大きな柱だと思っているのです
が、どれも素晴らしいサウンドに仕上がっています。ぜひ大きい音で聴いてほしいです
ね。お家では大きな音が出せないという人は、車の中とかでぜひ! ライブでも早く歌
いたいです。
──1曲目「あなたにスマイル:)」で柔らかく始まったかと思ったら、続く「
Butterfly Butterfly」「LOVE BEBOP」で容赦なくテンションを上げてくる流れが最高
でした。
がっつりですよね(笑)。この2曲は先ほどお話した通り、SAKOSHINさんのトラックを
もとに詞から書き始めて。そのあとで彼が大事にしているビート感を確認しながらメロ
ディを付けていきました。メロディを歌っていると同時にコーラスワークも浮かんでく
るので、そこもこだわって作っていきましたね。その作業が楽しすぎて、「Butterfly
Butterfly」ではコーラスを入れると全部で165トラック以上になってしまって(笑)。
──ともにハネたビートの上で、本当に気持ちよさそうに歌声を弾ませていますよね。
ありがとうございます。歌でもビートを作っていく感覚で歌いました。リズムが持って
いるビートをしっかり聴きながら、どこにアクセントを付ければよりビートが強調され
るかを考えて気持ちいいノリを作っていきましたね。
歌に現れた恐竜
──「Oh Lovely Day」という曲は、進行表を見ると完成までに1年近くかかってますよ
ね。
時間がかかってしまった理由は歌詞なんですよ。4回くらい書き直しました。最初は子
供に対してのメッセージを歌えたらいいねっていうところからスタートしたんですけど
、途中で上がってきた松井寛さんのアレンジがそういった枠を壊して、いろんな人に届
くキャッチーなサウンドになっていて。なので、聴き手を限定しない歌詞にしようと思
ったんです。
──“恐竜”が出てくるくだりが印象的でした。
あははは(笑)。そこのくだりは最初から一貫して詞に入れてました。あまりにも唐突
すぎるかなと思って迷ってたんですけど、「面白いから入れたほうがいいよ」ってプロ
デューサーにも言ってもらえたので。
──運命的な出会いを果たした瞬間に、思考がとんでもないところまでぶっ飛ぶような
感覚でしょうか?
そうそう。あの恐竜があの恐竜と出会ってくれたから私たちも出会えたんだね、みたい
な(笑)。誰かを好きになると世界中のすべてのことが好きになりますよね。そう考え
るとやっぱり愛ってすごいなって思います。
この1年を“LOVE BEBOP”してください
──続く「FREEDOM」は2015年の2月に完成したというEDMナンバーです。
音自体は2014年にはあったんですけど、2015年に入ってからリリックを仕上げて歌入れ
しました。作曲は「Always」や「逢いたくていま」の佐々木淳さん。それをニューヨー
クの(KAZUHISA)GOMIさんにアレンジしてもらったら、すごく今なサウンドになって返
ってきました。
──アルバムの中には例えば「花」のようにシンプルな楽曲がある一方で、こういった
デジタルサウンドを用いた派手なナンバーがあったりもする。その振れ幅を多彩なボー
カルで軽々と行き来できてしまうのがMISIAさんの大きな魅力だなと改めて感じました
。
ベーシックにはソウルがありつつも、ヒップホップやハウスなどいろんな音楽のカラー
がありますからね。だから「MISIAのアルバムはデパートみたいだね」ってよく言われ
るんですけど(笑)。
──まさに本作もそういった趣ですよね。で、そのいろんなスタイルを楽しみ尽くして
いる感覚が歌声ににじみ出ているから、聴き手も自然と笑顔になってしまうという。
はい、楽しんで歌ってます(笑)。今回のアルバムはすごくいいビートを持った曲が多
いので、この作品をきっかけに素敵な1年をスタートさせてもらえたらいいですね。こ
の1年を“LOVE BEBOP”しながら過ごしてほしいなって。今の世の中にはいろんな問題
がありますけど、そのすべてを愛で打ち破ってほしい!
──そのフレーズをアルバムタイトルにしたことにはそういった意味があるんですね。
はい。タイトル候補はいろいろあったんですけど、このフレーズが生まれたらもうこれ
しかないなって。私も2016年は仕事もプライベートも“LOVE BEBOP”します!(笑)
ツアーもまたやりたいなと思っているので、このアルバムを楽しんでいただきつつ、そ
ういった情報にもアンテナを立てていただけるとうれしいですね。
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