http://music.emtg.jp/liveReport/20140904317d290dc
MISIA、今年も「Candle Night」開催。河口湖ステラシアターをレポート
今年で3回目を迎えたMISIA Candle Night 2014。河口湖ステラシアターのエントラ
ンス広場には、Candle Night Barが展開され、早々と到着したオーディエンスが思い思
いの種類のワインを野外のテーブルで楽しんでいる。ワインの収益でアフリカに蚊帳を
寄付する、マラリア予防のチャリティーになっているのがMISIAらしい。他のテントで
は、入り口で渡されたキャンドルに火を灯す人たちが、今日のライヴへの想いを隠し切
れずに、期待の言葉を交わしている。
僕もキャンドルを手に会場へと入った。ステージ上は、すでにおびただしい数のキャ
ンドルで埋め尽くされている。こんなに美しい“開演前の光景”を見るのは初めてだ。
やがてバンドのメンバーが入場し、MISIAが現われたとき、拍手と歓声は最初のピーク
を迎えた。
8人のストリングスと4リズム、それにバックコーラス“星空のシスターズ”の3人
とMISIAを合わせて、総勢16名がまずは讃美歌「Gloria」で音を合わせる。誰でも知っ
ている端整なメロディが、初めて耳にするコードワークで奏でられ、完全にMISIAの世
界観に染め上げられていく。アレンジは傑作「THE GLORY DAY」を手掛けた鷺巣詩郎で
、いきなり初期のMISIAのストリングスの“進化形”を提示する。MISIA自身も喉は絶好
調で、最初の鳥肌が立つ。Candle Nightでは毎回、音楽的発見があるのだが、彼女の中
に今ある原点回帰のレベルの高さに驚かされたのだった。
続いてはニューアルバム『NEW MORNING』から「Re-Brain」。コーラスのHanah
Springのシェイカーが効果的なグルーヴを刻み、こちらは最新型のMISIAの洗練された
姿が確認できた。懐かしさもある「Gloria」と、エッジーな「Re-Brain」 の、たった
2曲で会場をすっかり“Candle Night”ワールドに引き込む素晴らしい滑り出しだ。オ
ーディエンスは手にしたキャンドルを捧げ持ち、すり鉢状の客席いっぱいにキャンドル
の灯が揺らめいたのだった。
「蒼い月影」のイントロでMISIAが口を開く。「この景色を、みなさんにここから見
せてあげたい。今日はみなさんの心の中に、たくさんの火を灯してくださいね」。この
言葉に、MISIAの瞳に映るキャンドルの炎が見えたような気がした。圧倒的な彼女の歌
声が、あっさり日常を忘れさせてくれる。一方で、電力をはじめとする物 質至上主義
の我々の日常を、もう一度考え直してみるチャンスを与えてくれるのが、このCandle
Nightだ。音楽の力を信じるMISIAだからこそできるイベントであることを、改めて実感
したオープニングだった。
最高のボーカルとサウンドが、充実のライヴを引っ張っていく。富士山のふもとで聴
く「眠れぬ夜は君のせい」は、至福の歓び。さらにはベッド・ミドラーの名曲カバー「
THE ROSE」は、MISIAとコーラス3人のハーモニー・サウンドが見事に決まって、ここ
まででいちばんの拍手を浴びていた。「本当に、この3人とは“息が合う”」という
MISIAのコメントにも賛同の歓声が上がり、僕はできればこの4人でシングルを出して
欲しいと思ったものだ。
「幸せをフォーエバー」の終わりで、会場を覆っていた屋根が開く。涼しい風が流れ
込んできて、高まる熱気をちょうどいい温度にしてくれる。見上げれば雲の向こうに月
が見える。あまりにもピッタリな“自然の演出”に、会場からため息が漏れた。しかも
、終盤に来て、MISIAの声がさらにパワフルになっている。ラストの「僕はペガサス 君
はポラリス」で、バンドもストリングスもコーラスも、そしてMISIAの声もピークに達
して、今年も充実のライヴとなった。
アンコールは、ドラムのビートから。それに合わせてすぐにハンドクラップが起こる
。リズムに乗って再び登場したMISIAは、「久しぶりに歌います」と言って初期の大ヒ
ット「BELIEVE」を歌い始めた。今日のオープニングの「Gloria」と合わせて、15周年
を過ぎた彼女が、デビュー以来、どれほどの高みにまで自分の音楽を押し上げてきたか
が、手に取るようにわかる。大きなグルーヴと繊細な歌詞の表現が、“新鮮さを失わな
い実力派”MISIAの現在を伝えてくれた。
アコギと、セカンドライン風のドラムで「One day One life」を情感豊かに歌った後
、MISIAの合図でオーディエンスがそれぞれの願いを込めてキャンドルを吹き消す。ラ
ストナンバーは、今回に向けて作った新曲「Candle Of Life」。争いのない世界の実現
をキャンドルに祈る歌だ。彼女の願いと音楽が完璧に一致した、大感動のエンディング
となった。
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