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MISIAが語る最新シングル秘話とドラマー青山純との思い出
ナタリーPower Pushにて、MISIAのニューシングル「僕はペガサス 君はポラリス」に迫
るインタビューを公開した。
現在放送中のテレビドラマ「S -最後の警官-」の主題歌として話題を集めている新曲「
僕はペガサス 君はポラリス」。インタビューではMISIA本人にその制作過程を詳しく聞
いた。なおMISIAにとって今作は、昨年末に急逝した名ドラマー青山純との最後の共演
作となっており、CDジャケットには彼への追悼のメッセージが刻まれている。インタビ
ュー後半には青山との思い出やレコーディング中のエピソードも語ってもらった。
MISIAの2014年第1弾シングル「僕はペガサス 君はポラリス」がリリースされた。前作
「幸せをフォーエバー」から約5カ月ぶりの新曲となったこの「僕はペガサス 君はポラ
リス」は、現在放送中のテレビドラマ「S -最後の警官-」の主題歌として書き下ろされ
た楽曲だ。
インタビューではシングルの制作過程を詳しく語ってもらううち、昨年末に惜しまれつ
つこの世を去ったドラマー、青山純の話題に。今作にはMISIAがデビュー当時から時間
をともに過ごしてきた名ドラマーとのゆかり深い思い出と、最後の共演となったプレイ
が収められている。
スローバラードとはちょっと違うBPM85の表現
──「僕はペガサス 君はポラリス」の制作はどんな風に始まったんですか?
ドラマのタイアップのお話をいただいてから、書き下ろしました。「ラブソングにもつ
ながるバラード」っていうお話でしたが、台本と原作を読ませてもらって、男らしい強
さをテーマにした世界観だと思ったので、もしかしたらバラードじゃないほうがいいか
もっという印象でした。いわゆるスローバラードのテンポは、1分間に70拍以下という
イメージですよね?「僕はペガサス 君はポラリス」は85ぐらいあるんです。このテン
ポは、バックが壮大だとバラードにも聞こえるし、ビートが細かく刻まれているとミデ
ィアムに聞こえるっていう、中間のテンポなんです。
──なるほど。
最初に集めたデモ曲、いい曲が多かったんですけど、その中でプロデューサーが、この
曲がいいんじゃないかなって。最初は、これまでにはなかった曲なので、私に合うかな
?と思いましたが、試しに歌ってみたらすごくよくて! ドラマにも「絶対これがいち
ばん似合う!」って。バラードにもなるし、ミディアムの熱いテンポのものにもなるっ
ていう、すごく絶妙な感じ。それと、MISIAが今までやったことのないタイプの曲だっ
たので、やっぱり新しさっていう意味でも聴いた人にハッとしてもらえるかなと。しか
も、新しいタイプの曲って、私、歌詞を書きたくなるんです。
──へえー! そういうものなんですね。
だから、ものすごく創作意欲の湧く楽曲だなあって思ってました。そうしたら、次にド
ラマ側から来たのは「ラブソングだけじゃなくて、友情にもつながるような歌がいい」
っていうオーダーでした。
──変わっちゃった(笑)。
そう(笑)。ラブソングも友情もっていう。たぶん愛の範囲がちょっと広くなってた。
だったら、よりいいんじゃないかって「僕はペガサス 君はポラリス」をプレゼンして
みたら、向こうもすごく気に入ってくれてOKになったんです。じゃあ、さっそく歌詞を
書こうって。
──創作意欲は満々だし(笑)。
そうそう。ただ「ああ 風になり ああ 光になり」っていうフレーズは、曲だけの状態
のときからなんとなく聞こえてはいたんです。改めて原作を読んで、歌詞を書いて、同
時にアレンジと楽器レコーディングを進めていきました。
横山裕章×重実徹×服部隆之
──作・編曲の横山裕章さんとは今回が初めて?
はい。でも彼は、MISIAの楽曲をデビュー当時から全部聴いてくださっていて。お話を
してると、私の楽曲のアレンジにも詳しくて、ものすごく音楽マニアなんですよ。なの
で、全体のプロデュースを重実(徹・MISIAのライブのバンマス)さんに、アレンジを
横山さんにやってもらうことにして、さらにストリングスは服部隆之さんにお願いしま
しょうってなったんです。そうしたら、すごい面白いアレンジになりました。
──楽しくて、しかも思いどおりの制作だったんですね。
はい。楽器レコーディングは、「できることなら今回のツアーで一緒にやっているバン
ドメンバーとレコーディングができたらいいね」って、レコーディングのスケジュール
を組んでいきました。
馬と人間の信頼関係
──歌詞のキーワードになっている“ポラリス”も“ペガサス”も、どちらも星の名前
ですけど、それは「星空のライヴVII」ツアーをやってたからなんでしょうか。
それもあると思います(笑)。それと、この1年、例え話みたいな切り口でリリックを
書きたいな、“私”とか“僕”が人間じゃない、いわゆる擬人法で書きたいなと思って
たんですね。もしかしたら、今の世の中の流れは、特に“日本が”なのかもしれないん
ですけど、若干擬人したり例えたりしないとものが言いづらい世界になっているような
(苦笑)、そんな印象を受けていて。で、ちょうど「来年は午年で、私は午年だなあ」
って思ってたんです(笑)。
──ペガサスは“天馬”だから(笑)。
そうなんです。ここ数年、私は馬が大好きで、しょっちゅう乗馬に行っていて、馬に関
してはいろいろ思うところがあるんです。馬と人間の関係って、人と人との信頼関係み
たいなものにすごく通ずるところがあって。馬と人との例え話が、人と人との例え話に
繋がるところがあると思う。アルバムのジャケットも「今回は馬で行く」って言われて
、「お? みんなの志向がちょうど合ってるな」と。そんな状況の中で、馬と一緒にジ
ャケット撮影をしたその日に、この歌詞を書きました。
──ところで、ドラマ「S -最後の警官-」で向井理さん演じる神御蔵一號と、綾野剛さ
んが演じる蘇我伊織は、どっちがポラリスなんでしょう? ポラリスは、北極星で、航
海の目印にもなってる星ですが。
まったく思想が違う2人なんですけど、実は“犯人から人々を守りたい”っていう共通
点を持っている。2人の信頼関係っていうのが、歌詞のポイントでした。それを擬人法
で語ることによって、男と男かもしれないし、男と女かもしれないっていう、性別を超
えられるっていうところもあるので、すごくいいんじゃないかなあって思ったんですよ
ね。そこから強さや信頼関係を描きたかった。2人は、お互いにとってお互いがペガサ
スやポラリスになっていく存在なんじゃないかなと思ってるんですね。それは一號の恋
人役の、吹石一恵さんが演じてる棟方ゆづるとの関係性にもつながっていて、ラブソン
グにも友情の歌にもなるかなあっていう感じでしたね。
音楽という翼を持ったペガサスにならなきゃいけない
──いろんな要素が重なって、うまいところに収まりましたね。
はい。それに……この曲は楽器のレコーディングをするスケジュールを12月に組んでい
て、「そろそろレコーディングしなきゃ」って言ってるとき……12月3日に青山純(
MISIAをデビュー以来支えてきたドラマー)さんが突然お亡くなりになって。その数日
後に楽器レコーディングがあったんですね。私はすごく悲しくて、「どんな気持ちでレ
コーディングに臨めばいいのかな」って思ってました。不思議なんですけど、同じよう
に悲しんでる人たちとスタジオで会って、青山さんの思い出話をいろいろしているうち
に、すごく慰められました。みんなで「青山さんはポラリスになっちゃったね」ってい
う話をして、じゃあ生きていく私たちが何にならなきゃいけないのかって言ったら、音
楽っていう翼を持ったペガサスにならなきゃいけないって。みんなが青山さんっていう
ポラリスを胸に抱いてる状態で、この曲の楽器レコーディングをしたんです。
──CDのジャケットに「In Memory of Our Beloved Drummer Jun Aoyama, Alex」って
書いてあるのは、そういうことなんですね。
「青山さんに」っていう思いもあったし、この曲自体がそういうストーリーを含んでる
んです。そして、カップリングの「Jewelry」が青山さんとの最後のレコーディング曲
なんです。今回の「星空のライヴVII」のツアーが始まる約半年前に、楽器レコーディ
ングをした曲だったんですね。
──青山さんって、どんなドラマーだったんですか?
やっぱりバラードでのドラムは忘れられないですね。レイドバックしながらも、後半に
向けてラッシュできる人って、あまりいないのではないでしょうか。青山さんのスネア
って、キックよりちょっとだけ後ろに行ってるんです。レコーディングのときは、それ
をスタジオで聴いた瞬間に「うおおおお! 青山さんだあ!」ってみんなで声を上げま
した(笑)。
──すごいですね。さすが名人。
「Jewelry」は素晴らしい出来だったので「この曲、みんなに早く聴いてほしいよね」
っていう話をしてたんです。偶然なんですけど、歌詞自体に青山さんとのことに通じる
ような言葉があって、私、亡くなられたときにも「青山さんと一緒に歌えたことが宝物
だ!」ってずっと言ってたんですけど、考えてみたら「あ、あの曲、『Jewelry』だ」
と思って。青山さんと最後にレコーディングした曲がジュエリーだ、宝物だったってい
う。だからこの「僕はペガサス 君はポラリス」は、私にとって忘れられないシングル
になりました。
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