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MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(後編)
MISIAは「R&Bやヒップホップが一種の流行からクラシックになる過程を生きていると思
う」と、自らのキャリアを冷静に振り返る。それは20年目に入ろうとしているアーティ
ストとしての覚悟でもある。
さらに新しい自分に出会おうとしている彼女の“今”を聞いてみることにしよう。
「奇跡待ちでええんちゃう?」って言われて「ええっ!? 奇跡待ちでいいの!?」って言
って(笑)
それで黒田くんとアルバムを作って、ライヴをやってみたわけなんですけど、久しぶり
に毎回ライヴが怖かったですね。
──ああ、楽しみもあるけど(笑)
楽しかった──でも何が怖かったかって言うと、ライヴをすると、毎回、ベストなんで
すよ。1日目から良くて、2日目はもっといい。ベスト・オブ・ザ・ベストが来るので、
「こんなにベストが来て、明日どうするんだろう」っていう(笑)「あそこをこうした
いから、こうだな」みたいなのが残っていると、「明日はもっとこうしてみよう」てい
うのがあるんですけど、「あ、ベスト来ちゃったな」っていう(笑)
──ははは!
ツアー“MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017”の初日の名古屋で「ベスト、来た!」って思
ったので、黒田くんにも「怖い!もう怖い!もう私、明日からどうすればいいんだろう
」とか言ってました(笑) 終わったあと、ダブル・アンコールまで来て、しかもすごい
ダブル・アンコールで。お客さんの拍手が10分ぐらいずっと止まらない。私たち、一回
楽屋に戻って話して、それでドアを開けたらまだ拍手が鳴っているから、「あれっ?」
って言って慌ててステージに戻って、ダブル・アンコールに応えたっていう。そのダブ
ル・アンコールで歌ったのは「キスして抱きしめて」だったんですけど、エンディング
をあんまり細かく決めてなかったんですよ(苦笑)、「どうしようか?」みたいな。で
、目の合図でお互い心を合わせて終わったって感じだったんです。
──でもそれが毎回続くのかなあと心配になるよね。
そう。奇跡的にすごく上手く行って、っていうのが1日目だった。意図的に終わったも
のは、奇跡的に終わるテイクには勝てないっていう気持ちがあるんですよね。で、次の
日にまた「キスして抱きしめて」をやってみようって話になったときに、黒田くんに「
ねえ、この前、奇跡的にうまく終わったんだけど、次はどうしようか、どうやって終わ
る?」って言ったら、「ああ、“奇跡待ち”でええんちゃう?」って(笑)
──ははは!奇跡待ち!(笑)
「奇跡待ちでええんちゃう?」って言われて「ええっ!? 奇跡待ちでいいの!?」って言
って(笑) 本当に奇跡待ちでしたね。ははは!
──ははは!
それが、毎っ回面白くて。しかもあの曲だけなんですよね、黒田くんと掛け合っている
の は。でも、音楽をやっている上で、知らないうちに自分で「こうやんなきゃ」って
決めてたものが、気付かなかったけどあったんだなあって思いましたね、今回のライヴ
をやってみて。
やっているうちに、「ああ、風が吹いたらいいなあ」とか、「向こうまで見える草原が
あったらいいなあ」とか「砂漠があったらいいな」とか思っちゃって
──今回のライヴを見せてもらって思ったのは、あのセッション・スタイルで音楽をや
るとしたら、相手は2000人までで、1万人には伝わらないだろうなっていうふうには思
ったんだけど。
あー。でもね、たぶん野外だと違うと思います。だって最初にこのバンドでライヴをや
ったブルーノートは野外でしたから。
──そうかあ! ごめんなさい(苦笑)
野外は違うと思いますね。いろんな常識が自分の中で崩れる瞬間があると思うんですよ
ね、これから。私もちょっと思ったんです、今回のスタイルは、Zeppっていうところが
特に合っていたんだろうなって思ったんですけど、やっているうちに、「ああ、風が吹
いたらいいなあ」とか、「向こうまで見える草原があったらいいなあ」とか「砂漠があ
ったらいいな」とか思っちゃって。だってトランペット自体が遠くに届かせるための楽
器だから。ドラムもそうだし。
──大会場でやるほうが、かえってナチュラルなのかもね。
そこはプロデューサーにお任せしようと思っていますけど。ただ、いろんな人に聴いて
ほしいなあ、いろんな人にライヴを観てほしいなあと思っています。このアルバムが作
りたかったのも「グローバルなものを作りたい」っていう思いがあってのことなので、
日本に限らず、いろんな場所で、いろんな人に聴いてもらいたいです。
「これからの音楽ビジョンとして、こういうものにトライしているんだ」っていうのが
、自分でもすごくハッキリ表現できた
──『MISIA SOUL JAZZ SESSION』の新曲の「来るぞスリリング」は?
「来るぞスリリング」、もう最高ですよね。実はこれが1曲目でもいいのかなってくら
いに思っていました。最初、黒田くんがアレンジのイメージが湧かないって言っていた
んですけど、あるとき「浮かんだ! カッコ良くなると思う」って言って。ただ、どう
いうイメージか私はまったく知らずに、また本番のレコーディングに入って、ポーンっ
てトラックが返ってきたら、ブラジリアン・リズムだった。
小川慶太くんのパーカッションの入り方が最高にカッコいいんですよ。で、レコーディ
ングした後に、ラウル・ミドンに参加してもらいたいってずっとラブコールを送ってい
て、ダビングしてもらった。ちょうど「さんまのまんま」の収録のときに楽屋でメイク
しながら、届いた音源を1人で聴いて「うわぁー!」って上がっていました。「サイコ
ー!」って、何回も聴いて(笑)もう、素晴らしいですよね。
──「運命loop」のほうは?
これも黒田くんたちがレコーディングした後に、マーカス・ミラーに渡してダビングし
てもらったんです。「運命loop」は歌っていて一瞬でもリズムを見逃すと、もう崩壊す
るので、すごく緊張感がありました(苦笑)。
今回、新曲をやった意味がすごくありましたね。今までの楽曲だけをリアレンジしても
らってやったら、たぶん「ああ、過去を振り返ったセルフカヴァーアルバムなのね」っ
ていう感じになったんじゃないかと思うんですけど、やっぱり新曲をやったことによっ
て「これからの音楽ビジョンとして、こういうものにトライしているんだ」っていうの
が、自分でもすごくハッキリ表現できた気がします。しかも、すごくいい新曲ができた
し。
「面白い!」と思っているか、「歌いたい!」と思っているか、「やりたい!」と思っ
ているか
──20周年を迎える直前に、このアルバムを出した意味は?
実はまだ、そこまで大きなビジョンが私の中でできているわけではないんですけど、今
年デビュー19年を迎えた中で、これからさらに20年、いわゆる40周年とか、──
──40周年!! 2倍だ!(笑)
はい(笑)目指していく中で思うことは、もちろんノドとか体力とか、歌っていける外
身、フィジカルな部分も大事だと思うんですけど、19年間やった中で感じることは、メ
ンタルがすごく大事だなと思うんです。つまりメンタルって何かっていうと、常に「楽
しい!」と思っているかどうか。
──自分がやっていることをね。
そうそうそう、そうです。「面白い!」と思っているか、「歌いたい!」と思っている
か、「やりたい!」と思っているか、っていうのがいちばん大事で。
──続けていく、いちばんのモチベーションというかね。
そうです、そうです。モチベーションがなくなっちゃったら、「何のために歌っている
んだろう」とか、「何のために続けているんだろう」っていうことになるので。だから
今は、「楽しい!」「やりたい!」って思うことをやっていきたいんですよ。そういう
意味で、「やりたい!」って思ったことでこれだけいいものができたってことが、今回
のひとつの成果だと思うし、これがすごくいろんな人に聴いてもらえて、みんなも「そ
う! これ楽しいよ!」って言ってくれたら、そこでやっと次に繋げられるから、だか
ら今は、「もう、お願いだから聴いてくれ!」と。ははは!
──あははは!(笑)。
20周年に向けて、ライヴに来てくださった人たちも、CDを聴いてくださった人たちも、
「すごくドキドキした!」「ワクワクした!」「楽しかった!」って言ってくれたので
、そういう音楽をこれからもずっと提供していきたいです。
──ありがとうございました。
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