https://www.jprime.jp/articles/-/15745
MISIA が “初の絵本” から伝える、アフリカの「リアルな命」の物語
昨年の大ヒット『アイノカタチ』をはじめ、われわれの心を揺さぶる歌唱力でアジアを
代表する歌手となったMISIAが、アフリカをテーマにしたチャリティー絵本『ハートの
レオナ』(主婦と生活社)を執筆。読者へ伝えたかったことや執筆の裏話などを、担当
編集者とともに明かしてくれました。
ツアー中にも関わらず、徹夜しながら執筆
─昨年7月から始まった『ハートのレオナ』の執筆、おつかれさまでした。最初にいた
だいた原稿はテキストファイルで65ページほど。ここからどこを残してどのように表現
していくかなど、削るのに苦労されました。
МISIA 削ることが大変というよりも、主人公・レオナちゃんの仕草などの描写やアフ
リカの景色をきちんと書き込みたいという気持ちと、アフリカの現実を書きたいという
気持ちのせめぎ合いでしたね。
─しかも昨年から今年の3月までデビュー20周年のツアー中。忙しいさなかに執筆して
、削ったり書き足したり。
МISIA 8月28日から横浜で開催されるTICAD(*アフリカ開発会議)前には発売したい
と思っていたので、ツアーを理由に発売延期をするわけにもいかず……。けっこう徹夜
しながら書いていましたね。こんなに大変な作業なのか、と。
ストーリーを口述して、プロの書き手さんに構成してもらうやり方もあったと思いま
す。ですが、アフリカでの経験がないと細かなニュアンスが難しい。これは私に課せら
れた責任だと思い、最後まで自分で書きました。
─文章に力がありますよね。これは、実際に体験した人にしか出てこない言葉だと思い
ました。リアルなアフリカを日本の子どもたちに伝えたいと始まった絵本づくりですが
、いちばん言いたかったことはなんですか?
МISIA 物語の切り口を模索しているなかで、10年前、私が初めてアフリカを訪れたと
きに、この先ずっとみんなに伝えたいと思ったことはなんだったのだろう、と振り返り
ました。それは、アフリカから学んだ豊かな心であったり、命のメッセージであったり
、音楽や文化の素晴らしさだったわけですが、私は、それらを知ったからこそ、アフリ
カが抱える問題の、本当の悲しみがわかったんです。さらに、私自身の生活を見直し、
本当の豊かさを見つめ直す大きなきっかけにもなりました。
命がけの発言を一番に伝えたい
─МISIAさんと本書の作画を担当されている大宮エリーさんが理事をされている財団法
人のmudef(ミューデフ)は、そのときの思いを具体化するために作られたのでしたよ
ね?
МISIA はい。音楽とアートを通じて日本の子どもたちに伝えるために、つながりのあ
るアーティストさんたちと2010年に設立したんです。mudefを通じ、私は子どもの教育
サポートを中心に活動を続けています。
─それ以前より、何度もアフリカを訪問し、アフリカの抱えるいろいろな問題と向き合
ってこられました。
МISIA 本書にも出てくる「音楽のあるところに戦いはない」「ラブイズフリー」「も
のは盗まれることはあっても学んだことは盗まれない」という言葉は、私が現地で知り
合った人から聞きました。それらは、発言した人たちが命をかけて命と向き合ってきた
からこそ、生まれたものばかり。まずはそれを一番に伝えたいと考えました。
─それで、レオナちゃんが訪れた国はすべてМISIAさんが実際に行ったことのある国に
絞って……。
МISIA 「レオナはライオンの女の子。」この書き出しだけは、最後の原稿まで変わら
なかったですね。ペリカンのムワリくんがカンガ(布)にレオナちゃんを包んで旅に出
る、という出だしがまず固まって。あとは、私が体験したアフリカをどんどん書いてい
こう、と。だから、フィクションですけど、私のなかではすべて事実が連なっているん
です。
アフリカとは別の側面から学んだ“命”
─レオナちゃんには、モデルになった女の子がいました。
МISIA 幼くして亡くなった身内の女の子がモデルです。ずっと病院に入院していたの
ですが、いつもおでこにハートのガーゼを貼っていて。その子のお姉ちゃんが「ハート
のレオナ」と呼んでいたんです。お見舞いに通ううちに、難病に苦しんでいる子どもが
大勢いることや、その家族の胸の痛みを知りました。命について、アフリカとは別の側
面から学んだのです。
それで、その子に伝えたいこと、見せたいことを書こう、と。物語のなかでは、自由
にアフリカじゅうを旅して、空を飛んで、たくさんの友達とも出会ってほしい、いろん
なことを感じてほしいと思い、言葉を紡ぎました。
─本書はチャリティー絵本の側面もあって、収益の一部は、アフリカと日本の子どもに
役立てることが決まっています。日本の子どもへも、というのは、その女の子のことが
あったから?
МISIA 企画段階から、私の印税はアフリカの子どもたちのために使わせていただくこ
とを決めていました。ただ、その女の子に教えられたこともたくさんあるので、助けを
必要としている日本の子どもたちのためにも使わせていただくことにしたのです。この
本を読んだひとりでも多くの人に、命について考えてもらえるきっかけとなれば、うれ
しいです。
MISIAが好きなページは?
ともに生きていくことが私たちの幸せの根源なのかな、と思っています。貧困問題、
環境問題、紛争問題……。どれも人間が解決するしかなく、すべてが命に向き合わない
と解決できないこと。私はこの本で命のメッセージを伝えたいのですが、その先にある
ものは何かといったら、世界平和につながる。自分の身近な人と仲よく生きて、その人
にとって大切な人とも仲よくして、友達の輪が広がっていけば、世界中が仲よくなって
平和になるんじゃないかな~って。この絵には、みんなで幸せに過ごして、ともに生き
ていく様子が描かれているので、好きなんです。
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