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東日本大震災の後、この国に不安が垂れ込めている。天災に人災があいまって再生の青
写真は見えぬままだ。人々が立ち上がり歩み出すために、表現者には何ができるのか。
ドラマ「遺留捜査」(テレビ朝日系)に主演する俳優の上川隆也と、その主題歌を歌う
MISIA(ミーシャ)が語り合った。
震災から9日後の3月20日は、今年一番地球に近い満月だった。その大きな月にも
触発されMISIAは、復興応援メッセージソング「明日(あした)へ」を書き上げた
。全国ツアーを中断し、音楽にできることやライブで歌う意味を考え続けた一つの結論
。
〈同じこの空の下 共に向かって行こう〉。寄り添う心が歌詞ににじむ。「今を一緒
に生きる人とつながりたかった」とMISIAは語る。
「たくさんの人があの月を見上げ、そばにいない誰かに思いをはせたはず。明日どう
なるかわからない、眠れない。そういう方々と一緒に明日に向かいましょう、という願
い」
その月を自らにたとえて上川が言う。「役者は自分で光っている気がしないんです」
。脚本があり監督がいて、スタッフに支えられて初めて輝ける。被災地のために動きた
い思いは募れど、「持てる表現力をどう帰結させられるかわからない。己の身一つで立
った時、何と無力かと」。
悩んだ末の5月、チャリティーイベント「RE:RE:RE:のRE」を東京で開い
た。俳優の近江谷太朗と2人で、コミカルなトークや詩の朗読。忙しい仕事の合間に、
できることを模索した結果でもある。題名は「天才バカボン」に登場するレレレのおじ
さんと、メール返信時に出る「RE:」をかけた。「再び」の意味もある「RE」の繰
り返しに、「再生に再生を重ねるという意味を滑り込ませた」。
十分なギャラは出せないのに快く参加してくれたスタッフに囲まれて感じたのは、絆
や思いの強さ。主演する「遺留捜査」も、期せずして思いや絆を描く作品だ。
上川演じる糸村刑事は遺留品から犯人を割り出す科学捜査係。見せ場は謎解きより、
被害者が遺留品に込めた思いを読み解く結末だ。「告げられなかった思いをリレーして
伝える物語は、震災で悲しみを抱えた数知れない方々へのメッセージになる。すごい巡
り合わせ」
死者と生者の思いが紡がれるその瞬間、MISIAが歌う主題歌「記憶」が流れる。
〈なにも言わないまま なにも訊(き)かないまま 心は 必ず抱きしめてる あな
たがくれた 代わるものない記憶を〉。震災前に完成した歌なのに、震災後の人々の心
をすくい取る。ドラマの筋を念頭に、「聴く人の優しい記憶につながる曲」を目指した
からだろう。
舞台もライブも大勢が集う場所だ。「ある種のコミュニティーでもあり、誰かの心に
浮かんだアイデアが人から人へつながる場所で、すごい力があると信じている。心の栄
養を届けるのが音楽だと思う」
歌の一節やドラマのせりふを自分に向けられたかのように感じた経験は、誰にでもあ
るだろう。「エンターテインメントは無意識に語りかけ、出会いのかけらや明日へ向か
う何かを振りまいている気がする」とMISIAは言う。
「誰かと誰かをつなぐハブ」。上川は自らをそう語る。自分の演技が誰かを触発はし
ても、行動を決めるのは見た人自身だからだ。「現実を忘れるのではなく、一時的に離
れて背負っている何かを下ろす。そんな人が腰を下ろすベンチになれればいい」(星野
学)
Source asahi.com(朝日新聞社)
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つながり合って 明日へ MISIA×上川隆也