倉木麻衣
群雄割拠の様相を呈する女性R&B界──それぞれのアーティストが"本物"へのアプロー
チを試み、個性の強さを前面に打ち出すのに躍起である。そんな中、彼女のシンプルで
親しみやすい音楽への姿勢は瞬く間に邦楽ファンを魅了し、唯一空席だったといってい
い“王道POP/R&B”の女王の座を弱冠16歳にして勝ち取ってしまった。
年齢も近く、アメリカでのデビューが先行──というバックグラウンドから、なにかに
つけ宇多田ヒカルと比較して評されることも多い。が、2人の音楽を通しての存在感は
、やはり異なったものではないだろうか。宇多田がさまざまな要素をしなやかに取り入
れ続け、常に我々の視線の先を走っていくのに対し、倉木には、隣にいるような優しい
安心感がある。その点で同世代を中心に共感を呼ぶことができ、1stアルバム『
delicious way』の売上が300万枚を超えるという大成功につながったのだろう。提供さ
れるトラックもシンプルで聴きやすい。そして、切なさと幼さが同居した、ちょっとタ
メを効かせた歌声が何とも魅力的である。
メディアへの露出が極端に少ない彼女に、周囲はいろいろと取り沙汰する──だが、倉
木麻衣は少女のように輝く瞳でまっすぐ前を見つめ、“リスナーのそばで”歌い続けて
いるのだ。
http://www.hipjpn.co.jp/archives/9370
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