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──2008年にリリースした前作『touch Me!』は、いままで以上にリアルな気持ちを表 現したうえで、素の倉木麻衣に触れて欲しいという内容になっていましたね。 【倉木】 いま振り返ってみると、自分の殻を破ったアルバムだったと思いますね。自 分がいまこの瞬間に感じている心境をストレートに出していこうっていう姿勢は変わっ ていないんですけど、今回は新しいアルバムのテーマとして、“涙のあとの希望”とい うコンセプトがあって。 ──どうしてそのテーマに辿りついたんですか? 【倉木】 今年の前半に、燃えつき症候群みたいになってしまった時期があったんです よね。昨年、アジア活動とか、10周年を記念したライブやベスト盤のリリースがあって 。それで、お正月になって、お休みをいただいたときに、ちょっと燃え尽きた感じがあ って。なにをするにも無気力な状態になってしまったんです。 ──そこからどうやって回復したんですか? 【倉木】 ふら~っとスタジオに立ち寄って、歌ってみたら、また気持ちが持ち上がっ てきて。私はやっぱり歌が好きなんだなって感じたし、表現できる場所があるのは幸せ なことだなって思えたんです。落ち込んでいた時期に自分を見つめ直していくなかで、 素の自分が出せる場所はやっぱり、音楽しかないなって。私は、性格的に真面目だった りするので(苦笑)、ハジける場所がライブしかないんですよね。ハジけるというか、 ハメを外せるのはライブしかない。だからこそ、改めて、ライブをずっとやっていくべ きだなって感じたんです。 ──そのせいか、ラブソングにしても、辛い失恋から再生していく過程の心情が綴られ ている曲が多い気がしますね。 【倉木】 そうですね。別れたあとで、自分を立て直すときの気持ちを歌っている曲が 多いと思います。とくにシングル「SUMMER TIME GONE」は、実らなかった片思いに対す る未練を振り切っていく気持ちを綴っているし、「I promise」や「sound of rain」に しても、失恋からの回復を描いていて。私のなかでの恋愛のポイントが、そこにあるの かもしれないですね。 ──失った直後にグッとくる? 【倉木】 心がキュンとなるというか、いちばんせつないポイントなんじゃないかな、 とは思いますね(笑)。 ──倉木さんは恋愛をするとどうなるんですか? 【倉木】 私はまっすぐになっちゃうんですよね。ホントに周りが見えなくなって、仕 事にも支障をきたしてしまうんです。そのくらい大好きになるからこそ、すごく傷つく んですけど、そこから自分を取り戻していきたいっていう想いを伝えていきたいなと思 っていて。 ──失恋を振り切るためにはどうしたらいいと思いますか? 【倉木】 かなりの時間が必要だと思いますね(笑)。あとは、やっぱり、なにかに没 頭するのがいちばん早いんじゃないかと。学生であれば、自分の好きなものや夢を持つ こと。仕事をしている方であれば、自分がどうなりたいかっていう未来像を大事にする こと。私の場合は、恋愛をすると、どうしても相手のことばかりを考えがちになって、 自分のことが抜け落ちてしまうんですね。そうではなくて、自分の未来を見つめること が必要なんじゃないかなって思います。 ──それこそ、まさにアルバムのタイトル曲「FUTURE KISS」で歌っていることですよ ね。 【倉木】 そうですね。いまを見つめて、まだ見ぬ未来に触れてみようっていう、前向 きな思いですね。いまの自分が置かれている状況をしっかりと見つめながら、希望を持 って、この先の自分を感じたいなっていう。落ち込んでる自分を見つめるなかで、人生 にはいいときも悪いときもセットであるんだなっていうことを感じたんですね。だから こそ、この落ち込みを乗り越えられれば、必ずいいことが待っているんだなって感じる ことができたし、聴いてくれる人にとっても、前向きな未来を一緒に考えていくことが できるアルバムになったんじゃないかと思います。 (文: 永堀アツオ) http://www.oricon.co.jp/music/interview/2010/kurakimai1117/index.html --