[惨ざん]
強張(こわば)る 躯籠(むくろご)めに
穢(けか)れと 謀(はかり)を 見(み)ゆ
攣(てなえ)も 蹇(あしなえ)も 無(な)みして
直(すぐ)に 此(こ)の 賊等(ぞくら)を 縊(くび)る
累世(るいせ)の 業(ごう)を 振(ふ)り 撒(ま)いて
阿修羅(あすら)の 胤(たね)か
其(そ)の 傲(おご)りに 嘔吐(たま)う也(なり)
下卑(げび)たる 朱塗(しゅぬ)りの 童(わろ)
上塗(うわぬ)りに 朱(しゅ)を 濺(そそ)ぎ
歯噛(はか)みと 戦慄(わなな)きに
落(おと)とした 首級(くび)も
己(おの)が 逝(ゆ)くを 知(し)らず
随気(ずいき)の 極(きわ)み 人共(ひとども)よ
枕(まくら)く 骨(ほね)の 主(ぬし) 改(あらた)め 出直(でなお)せ
比良(ひら)に 大江(おおえ)に 郷里(さと)を 追(お)われ
三年(みとせ) 妊(はら)みし 鬼子(おにご)なれば
見目麗(みめうるわ)しくも 嫉(そね)みの種(たね) 蒔(ま)いて
沙門(さもん) 比丘(びく)の 眼(め)が 淫(みだ)らに 光(ひか)る
憩(いこ)う 暇(いとま) 無(な)し
年(とし)を 経(へ)て 鬼(おに)の 岩屋(いわや)に
誘(さそ)うは 春(はる)の 風(かぜ) 散(ち)らすは 命(いのち)
比良(ひら)に 大江(おおえ)に 郷里(さと)を 追(お)われ
三年(みとせ) 妊(はら)みし 鬼子(おにご)なれば
酒(ささ)に 盛(も)らる 程(ほど) 詐(いつわ)り 怪(あや)しまず
行者供(ぎょうじゃども)の 手(て)に 嬲(なぶ)られ 消(き)ゆる
争(いか)で 鬼(おに)ぞ
孰(いず)れは 手前(てまえ)が 朱(あけ)に染(そ)まれ