背(せな)に 聞(き)くは 馴染(なじ)みの
浮(う)かれ歩(ある)く 風流士(みやびよ)が
思(おも)い 量(はか)らず
癪(しゃく)に 呼(よ)ばわる 声(こえ)か

引(ひ)け四(よ)つを 過(す)ぎたなら
要(い)らぬ 愛想(あいそ) 片付(かたづけ)て
すっと 互(たが)いに 知(し)らぬ 振(ふ)りなど
為遣(しや)れ 粋(いき)でなし

仮初(かりそめ)の ときめきを 上夢(じょうゆめ)にしたいなら
然(そう) 其(そ)の場(ば) 限(きり)の 事(こと)を
抱(かか)えた 侭(まま)で
佇(たたず)まう 浮(う)かれ女(め)の
心思(うらおも)いを 推(お)して
玉柳(たまやなぎ)を 愛めでる目(め)を
流(なが)して 罷(ま)かれ

母(はは)が 授(さず)けた 豊(ゆた)けし 髪(かみ)が
風(かぜ)に 暴(あば)れて 纏(まつ)わる
前(まえ)や 後(うしろ)や 判(はん)じ 兼(かね)るも
絶(た)え入(い)りけるとは 願(ねが)い下(さ)げなる

科(しな)を 欠(か)いた 倡妓(しょうぎ)の
後(うし)ろ髪(がみ)に 憶(おぼ)えあり
是(これ)も 縁(えにし)と 前(まえ)に 廻(まわ)るは
色(いろ)の 諫(いさ)め

馴(な)れ初(そ)めに 及(およ)ばぬを
よも 請(う)け出(だ)したいなら
思(も)う 莫迦(ばか)な 夢(ゆめ)を 投(な)いで
弾(はず)んで 花代(はな)を
無理(むり)に 咲(さ)く 浮(う)かれ女(め)の
心思(うらおも)いを 推(お)して
水花火(みずはなび)を 見(み)る様(よう)に
ちらりと 見(み)て 涼(すず)やかに