(壱)
囚(とら)われた 心(こころ)に 其方(そなた)の 影(かげ)
見返(みかえ)ると 見(み)すこと 強(したた)かなる
実(げ)に 惘(あき)るは 面妖(めんよう)な 真似(まねぞ)
逢(あ)い 見(み)るのは 晦(くら)ます 容貌(かたち)
夫(そ)れ夫(ぞ)れの 想(おも)いは 曇(くも)りなし
見(み)せ掛(か)けの 艶(つや)など 要(い)らぬ
貴方(あなた)を 見(み)せて
わらわらと 群(むら)がる [雑兵共(ぞうひょうとも)]
粉々(こなごな)に 捩(ちぎ)りて [雷電(らいでん)で 消(け)す]
あな 見惚(みと)るは 剛強(ごうきょう)の 業(わざ)よ
見据(みす)えるのは 破壊(はかい)の 夜明(よあけ)
其(そ)れ其(ぞ)れや 願(ねが)うは 腰(こし)の物(もの)
不心得(ふこころえ) 戯(ざ)ればむ 者(もの)が
妾(わらわ)を 欲(ほ)りて
崩(くず)れ落(お)ちる 心嫉(こころねた)し 手(て)を
見破(みやぶ)りても 疼(うず)く
心恋(うらこい)の 痛(いた)み
くすみ返(がえ)り 廻天(かいてん)を 訴(うた)う
其(そ)の 渦中(かちゅう)も 其方(そち)に
魅(み)せられた 身共(みども)よ
(弐)
応(お)う [応] 相対(そうたい) [対]
追(お)う [追う] 間男(まおとこ) [を]
氷(こおり)の 剣(つるぎ)が 煌(きら)めいて
利剣(りけん)を 欠(か)いても 衰(おとろ)えぬとは
覆(お)う [覆う] 楼台(ろうだい) [台]
覬覦(きゆ) [覬覦] 闡提(せんだい) [提]
数多(あまた)の 姿(すがた)で 舞(ま)い踊(おど)る
恰(あたか)も 菩薩(ぼさつ)ぞ 斯(か)くの如(ごと)く
益荒(ますら)の 鬼神(きしん)は 絶(た)え果(は)てよ
無数(むすう)の 鏑(かぶら)が その刻(とき)を 目掛(めが)く
頚(くび)は 是(これ)へ
零(こぼ)れ落(お)ちる 追(お)い首(くび)に 流(なが)る
口惜(くちお)しきを 重(かさ)ぬ
鬼神(おにがみ)の 嘆(なげ)き
此(こ)の 痞(つか)えに 命名(めいめい)を 求(もと)む
鬼首(おにこうべ)に 喚(わめ)き
箟嶽(ののだけ)で 微睡(まどろ)む
乙女(おとめ)よ 何(な)どに 挫(くじ)く
族(ぞう)の 外法(げほう)
然(さ)ればよ 闇(やみ)の 軛くびき
投(な)ぎて 砕(くだ)け