拾﹑ ポルターガイスト
もっと澤山逢ひにゐらして下さい...さう口走った君。
僕は愛ほしく思ひ﹑大層動じたので﹑前髮の成す造形に神經を奪
はれて﹑鍵も持たず家を出たのです。
斯くて﹑麗しき君の許へ超へていく想ひ﹑抑へました。 「今日は
電車で!」壱度乘り換へた頃﹑ 高まっていく時めきに負けさうにな
ってゐることに氣付き始めました。
真實は最初で最後なのです...さう口走った君。
僕は思ひ出しっつ﹑聰明な生き方を鳥渡真似たいと感じ颯爽と步
いては﹑キツと嚴しい表情をしたのです。
君を笑はす為に﹑微笑むでゐやうと思ひ﹑鍛へました。 「扉の前
にて!」若しも﹑此の部屋も無く﹑ 連なってゐる輝きがまやかしで
あらうとも僕に恐れなどはないです。
君はひと足先に微笑むで﹑幻視を與へました。 「こんま僕に!」
徐ら﹑見境も無く慾しくなるまぼろしは孰れ衰へても僕には美しく
見えます。君だけに是を唄ひます。
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